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 収益拡大策の一環としてTwitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などの米SNS大手が注力しているのがクリエーターだ。SNS上で価値あるコンテンツを配信する様々な分野のプロや専門家から一般人などが稼げる仕組みを用意し、利用者の裾野を広げたい考えだ。

TwitterがSNSやメルマガ配信のサブスク

 ツイッターは2021年6月3日、自社SNS(交流)アプリ内で「Twitter Blue(ツイッター・ブルー)」と呼ぶ有料版(サブスクリプション=継続課金)サービスをオーストラリアとカナダで始めたと明らかにした。ツイートなどの送信ボタンを押した後、最長30秒以内に取り消して修正できる機能や、ブックマークのフォルダー分類機能、長いスレッドを読みやすく表示する機能などを用意する。料金は月3.49カナダドル(約320円)と4.49オーストラリアドル(約380円)。iOS用アプリのプロフィルメニューで有料版に切り替えられる。

 こうしたプレミアムサービスは収益源拡大に向けた施策の一環だ。21年6月1日にはツイッターが新機能のコンテンツ内で広告表示を始めると米CNBCなどが報じた。米Facebook(フェイスブック)傘下の「Instagram(インスタグラム)」や米Snap(スナップ)の「Snapchat(スナップチャット)」などの「Stories(ストーリー)」に対抗し、20年11月に本格開始した「Fleets(フリート)」内で広告を配信する。フリートは24時間後に消える写真や画像、動画を投稿できる機能で、iOSとAndroid向けのTwitterアプリで利用できる。広告はスマートフォンの画面全体に表示される。当初は米国の一部利用者を対象に試験運用するという。

 CNBCによると、当初参加する企業は米ハンバーガーチェーンのウェンディーズのほか、日用消費財メーカーや小売店チェーンなどの計10社。ツイッターはこのテストを通じて利用者の反応を見る。フリート画面だけでなく、タイムライン画面など、同社サービス全域で全面広告を掲載することも検討している。

関連リンク:ツイッター(Twitter Blue) 関連リンク:CNBC(全面広告)

 ツイッターは21年2月に開いたアナリスト向け説明会で、23年の年間売上高を20年比約2倍の75億ドル(約8200億円)以上に引き上げる経営計画を発表。新たな機能やサービスの導入を加速させるとしていた。

 同社の21年1~3月期における広告売上高は前年同期比32%増の8億9900万ドル(約980億円)。同社が経営指標として重視する「広告を閲覧した1日当たりの利用者数(mDAU)」は1億9900万人。この人数を23年10~12月までに3億1500万人にする目標を掲げている。

 ツイッターは21年5月、有料ニュース配信サービスを手掛ける米Scroll(スクロール)を買収すると発表した。21年1月には有料ニューズレター(メールマガジン)配信プラットフォームを手掛けるオランダ企業、Revue(レビュー)を買収。開発中のサブスク型プレミアム機能でこれら企業のサービスを提供する計画だ。

関連リンク:ツイッターの臨時報告書(FORM 8-K) 関連リンク:ツイッターの発表資料(米スクロール買収)

ツイッター、投げ銭で個人の収益機会を拡大

 米Google(グーグル)傘下の動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」などのネット上で活躍するインフルエンサーが生み出す巨大な経済効果は「クリエーターエコノミー」と呼ばれ、ツイッターも注目するようになった。ツイッターはほかにもニューズレターなどの限定コンテンツをフォロワーに配信するサブスクサービス「Super Follows(スーパーフォロー)」や、音声ライブ配信機能「Spaces(スペース)」のチケット(入場料)制も計画中だ。

 21年5月には、クリエーターにチップ(投げ銭)を送れる「Tip Jar(チップジャー)」の試験運用を始めた。先ごろは、「認証バッジ」が付く認証済みアカウントの申請を再開すると発表。認証バッジの付与はこれまで公人や著名人に限定していたが対象を拡大する。報道機関やジャーナリスト、エンターテインメント分野、スポーツやeスポーツの選手、活動家、オーガナイザーなどにも広げる。信頼できる個人であることをツイッターが公式に認める制度で、クリエーターの収益機会拡大を後押しする。

関連リンク:ツイッターの発表資料(Tip Jar) 関連リンク:ツイッターの発表資料(認証済みアカウント)