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 英フィナンシャル・タイムズ(FT)は2021年11月1日、米Apple(アップル)が21年4月に導入したモバイルアプリの端末情報追跡制限によって、SNS(交流サイト)大手4社の広告売上高が約100億ドル減少する見通しだと報じた。専門家は、米Snap(スナップ)の写真・動画共有アプリ「Snapchat(スナップチャット)」や米Meta(メタ)のSNS「Facebook(フェイスブック)」、米Google(グーグル)傘下の動画投稿サイト「YouYube(ユーチューブ)」、そして米Twitter(ツイッター)の売上高が21年後半に計98億5000万ドル(約1兆1200億円)減少するとみている。

アップルの規制によりSNS大手の広告売上高が大きな影響を受ける
アップルの規制によりSNS大手の広告売上高が大きな影響を受ける
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広告主はより安価な中国発「TikTok」に注目

 アップルの新ルールによって、広告収入が大きく減少したのはスナップとメタだと指摘されている。スナップはモバイルアプリに大きく依存したビジネスを展開しており、収入減少率が最も大きい。メタはその利用者規模から金額ベースの減少幅が最も大きい。とりわけ、フェイスブック広告は過去数年間、料金が上昇しており割高感があるという。

 こうした中、採算が取れなくなった広告主は、より安価に出稿できる中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に注目している。TikTokは「CPM(Cost Per Mille、コストパーミル)」と呼ばれる1000回表示当たりの料金が安いという。

 また、21年後半における逸失広告収入はメタだけでも83億ドル(約9400億円)に上ると推計されている。「SNS大手の収入減少は今後数四半期続く」と広告技術コンサルタントのエリック・スーファート氏は予測している。

 メタが21年10月25日に発表した21年7~9月期決算は売上高が前年同期比35%増の290億1000万ドル(約3兆3000億円)、純利益が同17%増の91億9400万ドル(約1兆500億円)だった。主力のネット広告が伸びたものの、売上高の増加率は4~6月期の56%から鈍化した。7~9月期の売上高増加率は20年10~12月期以降で最も低い。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、メタのシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)は決算説明会で、「アップルの広告規制強化がなければ売上高はもっと伸びていた。当社と当社の広告主は今後もその影響を受けるだろう」と説明した。

関連リンク 英フィナンシャル・タイムズ(FT) フェイスブック(現メタ)の発表資料 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)

アップルの追跡制限で顧客獲得単価2倍に

 アップルは21年4月、利用者のプライバシー保護を目的とした新ルール「アプリのトラッキング透明性(ATT、App Tracking Transparency)」を導入した。アプリ運営会社に対し、行動データの計測と追跡に利用者の同意を求めるよう義務付けている。

具体的にはターゲティング広告配信に必要となる端末固有の広告用識別子「IDFA(Identifier for Advertisers)」をアプリが取得する際、ポップアップ画面を出して利用者から許諾をとる(オプトイン)ようにした。この同意オプションは従来、iPhoneなどの端末全体の設定画面で一括して行っていたが、4月以降はアプリを初めて開く際、可否を利用者に必ず尋ねる仕組みにした。

 ロイターによると、その意図について、アップルのソフトウエアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギ氏は「他のアプリやウェブサイトでの行動を追跡されているユーザーは、その事実を知らされるべきだ。ユーザーを追跡したいのなら明確な許可を得るべきだ」と説明していた。