5Gは当初から性能面での主要な要件として、(1)高速・大容量、(2)低遅延、(3)同時多数接続―の三つを開発目標に挙げている。現在の4Gと比べると最大通信速度は1Gビット/秒から20倍の20Gビット/秒に、遅延は10ミリ秒から10分の1の1ミリ秒に、同時多数接続では1平方キロメートル当たり10万台から100万台と10倍に、それぞれ向上することになっている。
各携帯電話会社は、こうした5Gで実現する性能向上を生かし、新しい産業を生み出そうと、様々な会社と組んで開発を進めている。そのうちの一部については、すでにデモなどを披露し始めている。5Gの登場により実現する世界を見てみよう。
5Gの高速・大容量を生かしたコンテンツとして真っ先に思いつくのは臨場感あふれる映像配信だ。
NTTドコモは、東京スカイツリーの天望デッキに4Kのカメラ6台を設置し、その映像をつなげて360度の視界映像をリアルタイムで地上に伝送している。別の地点にいながら、あたかもスカイツリーの天望デッキにいるような映像を見られる。
KDDIは、スポーツ競技場などのスタジアムで全方向映像の配信を実験している。スタジアムに設置した複数の4Kカメラの映像をサーバー上で合成することで、スタジアム内の様々な場所から見た映像を再現する。
NTTドコモとKDDIのどちらの例も高解像度映像をリアルタイムで転送し、必要な計算処理して瞬時に配信する。高速・大容量の5Gだからこそ実現できるサービスだ。
4Kカメラで街の安全を守る
高解像度映像の活用では、街の安全確保などセキュリティ分野での応用も期待されている。
例えば、街角やドローンに設置した4Kカメラの映像を5Gの通信回線で警備会社のデータセンターのサーバーやクラウドに集める。そしてリアルタイムで次々と収集される大量の画像データを分析し、怪しい人物をいち早く見つけ出す。
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を利用するプラットフォームとしても5Gは期待されている。
例えばNTTドコモは、VRを利用する「ソードアート・オンライン」というコンピュータゲームのデモを披露した。
プレーヤーはVRゴーグルを装着し、剣と盾を模したコントローラーを両手に持つ。そのコントローラーを操作しながら、仲間と一緒にモンスターにダメージを与えていくというゲームだ。