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 ソニーの新型aibo(アイボ)を語るシリーズ、連載第2弾は中小電機メーカー風の芸術ユニット「明和電機」の代表取締役社長である土佐信道氏を迎え、実機に触れての感想を聞いた。土佐氏は独自に製作した工学製品を用いるライブパフォーマーであり、そうした製品のプロデュースも行っている。aiboへの期待や課題を、ロボットの「アニミズム」(無生物に生命を吹き込むこと)を切り口にして語ってもらった。(聞き手=内田 泰、内山 育海、構成=赤坂 麻実)




「得体の知れなさ」は醍醐味

 新型aibo、ソニーらしいなと思います。まじめにしっかり作られていて、成形もきれいです。目をどうするかは悩んだんでしょうね。(有機EL)ディスプレーだから、映そうと思えば、ハートマークでもはてなマークでも何でも表示できてしまう。それはやらない考えなんでしょうが、目のハイライト(白く光る部分)は映像で入れてあるんですね。

明和電機 代表取締役社長の土佐信道氏
明和電機 代表取締役社長の土佐信道氏
aiboが鼻の魚眼カメラで撮影
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 本当は、無表情の方がかえって自由に感情移入できるのかもしれません。日本人には人形浄瑠璃(じょうるり)の人形や埴輪に感情移入してきた歴史がありますし、芸術家たちも大昔から、彫刻にしろ人形にしろ、生命がないものに生命を吹き込むアニミズムを実践してきました。

 僕は大学時代に自動人形(オートマタ)を作りましたが、自分の作った人形であっても、独特の気持ち悪さは感じていました。人間とは違う無機物が人間っぽく動くのって本能的に「なんかヤバいぞ」という気持ちにさせられるんですよ。どこか恐怖心を抱いてしまうところがあって、それがエンターテインメントになる。中世ヨーロッパのオートマタや江戸時代のからくり人形もそうです。怖いから、不思議だから、面白い。

明和電機のオタマジャクシ型電子楽器「オタマトーン」の顔をaiboに装着した様子
明和電機のオタマジャクシ型電子楽器「オタマトーン」の顔をaiboに装着した様子
「やっぱり犬は犬の顔の方がいいですね」と土佐氏
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 aiboも、コミュニケーションし切れない部分が得体の知れなさを醸し出していて、そこが醍醐味でもあると思います。家電なら、スイッチを入れてボタンを押せば、決まった仕事をしますが、aiboみたいなコミュニケーション型のロボットはそうじゃない方がいい。Aのスイッチを押してAの動作をするばかりじゃ、むしろつまらない。入力に対して、まるで違う答えを出してきて、こちらをドキッとさせる演出が、こういうロボットには必要なんだと思います。