顔認証の適用例として最も多いのは、入退室管理だろう。オフィスやマンションの入り口にカメラがあり、事前に顔画像を登録している人でないと顔が照合されず、その人は部外者(あるいは住人ではない)とみなされてドアが開かないようになっている。
企業の場合、機密性の高い情報を扱う研究所やデータセンター、危険物を保管している倉庫といった場所は、入退室にパスワードやICカードが要るほか、生体認証も併せて採用しているケースが多い。指紋や静脈、目の虹彩などを使った生体認証もあるが、これらは専用の機器に指や手をかざしたり、目でのぞき込むといった動作が必要になる。セキュリティを強化すると、その分、面倒が増えるのはよくある話だ。大抵、利便性と安全性はトレードオフの関係にある。
その点、昨今の顔認証は精度が向上し、歩きながらドアに近づくだけでカメラが自動的に顔を認識してくれる。カメラの前で立ち止まる必要がないので、頻繁に出入りする人にとっては手間が省けるので利便性が高い。
こうしたメリットがある顔認証を使った入退室管理をさらに強化しようとしているのがセコムだ。都内にある同社の「IS研究所」では様々なタイプのカメラを使って、顔認証やほかの認証との組み合わせで、より高度な本人確認や不審者の早期発見、急病人などへの素早い対応を実現する次世代システムを開発している。
セコムは警備会社であり、ハードを作るメーカーではないので機器は外部から調達することが多い。しかし、長年蓄積してきた警備ノウハウが詰まった認証のアルゴリズムといったソフトは「可能な限り、自前で開発している」と、IS研究所の黒川高晴副所長は説明する。警備の根幹部分は他人任せにはできないというわけだ。