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運命を分けた収束操作優先度

 本来、比較の精度を上げるには、過酷炉心損傷事故計算コードによって、原子炉格納容器型式や余熱除去系の機能の有無を考慮した注意深い影響評価が欠かせないが、ここでは前回の最後に述べた1)~4)を踏まえた上で、第ゼロ近似として議論を進める。

 まず、ブラウンズフェリー1号機では、事故終息操作として後に体系化された米原子力規制委員会(NRC)の技術基準通り、原子炉の減圧操作を最優先とし、原子炉格納容器のベンチレーション(ベント)は2次的問題と位置づけた。原子炉の減圧操作をくり返せば、原子炉の飽和温度が低下するからである(冷温停止するには原子炉の圧力と温度を下げなければならない)。

 一方、福島第一2、3号機では、原子炉格納容器の圧力が、設計圧力よりもはるかに低かったにもかかわらず、ベンチレーションを最優先し、原子炉の減圧操作を2次的操作と位置づけた。

 図4は、RCICとSRVのみ機能している全交流電源喪失の初期段階のイベントツリー、図5は参考文献5)に示されている標準的な手順(手順書)とブラウンズフェリーおよび福島第一の推移である。結論から言うと、手順書のような処置を確実に実施できるか否かが運命の分かれ道であった。何があろうと1時間以内に原子炉減圧操作を始めなければ冷温停止できなかったのだ。

図4 RCICとSRVのみ機能している全交流電源喪失の初期段階のイベントツリー
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図4 RCICとSRVのみ機能している全交流電源喪失の初期段階のイベントツリー
〔参考文献4)から〕
図5 手順書とブラウンズフェリー、福島第一の事故対応の違い
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図5 手順書とブラウンズフェリー、福島第一の事故対応の違い

 原子炉格納容器の圧力変化(前回の図3)から判断できることは、福島第1の2、3号機とも、設計圧力以内に留まっており、ベントを最優先しなければならない根拠は存在しない。そもそも、利用限界圧力は設計圧力の2倍とされており3)、設計圧力を超えたからといってベントする必要はない。つまり、東京電力は、事故収束操作を誤ったみることができる。主要な問題(原子炉の減圧)が何か、2次的問題(原子炉格納容器のベント)が何かの判断を間違えたのである。

 ただし、いったん冷温停止に導いても、その後も崩壊熱の除去が必要で、例えば低い圧力のまま、消防車からの連続注水によって原子炉を満水にしつつ、直流電源の電池交換を繰り返しながらSRVを開くといった処置が必要だろう。崩壊熱が多いため、多くの冷却パスを構成できなければ冷温停止は維持できない*1

*1 崩壊熱は0.5~1万kWと推定されている。東京電力によれば、通常の崩壊熱除去運転において2000t/hの冷却水を原子炉に循環させている。消防車で供給できるのは、その1/10程度である。