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過酷炉心損傷事故に対応できるプロを育てる

 事故当時福島第一原発所長だった故吉田昌郎氏の知識・経験と一般的な事故対応能力は、日本でも有数だった。それでも事故報告書などを見る限りでは、過酷炉心損傷事故への対応能力は必ずしも高くなかったと言わざるを得ない1、3)。

 その背景には、日本の電力会社が共通して抱えていた「日本は管理技術が高いため、過酷炉心損傷事故は発生しない」という安全神話のために、過酷事故に対する高度な知識と経験の備えがなかったことである。それこそが、まさに福島第一原発事故の失敗の主因であった。

 電力会社が国に提出する「原子炉設置許可申請書」には、原発を建設・運転・技術管理する人材や取得資格は記載されている。しかし、取得資格については通常運転やごく普通の事故に対応できる技術能力にとどまっており、過酷炉心損傷事故を想定した対応にはなっていない。2、3号機を冷温停止できなかったことがそれを示している。

 もともと福島第一原発事故以前は、規制側も事業者側も過酷炉心損傷事故に対する認識が低かったため、その対策にはあまり注意が向けられていなかった。事故後でさえ、前述したように新規制基準は、ハード対策が中心で、電力会社の組織力や技術力といったソフト対策は、事業者努力に依存している。そのままで良いわけがない。

 故吉田氏のように、原発の建設・運転・技術管理・所長職など、四半世紀以上にわたって原発の運転を経験していても、過酷炉心損傷事故対応について訓練されていなければいざという時に対応できない。

 そうしたエンジニアについての国際的な基準があるわけではないが、日本にとって過酷炉心損傷事故に対応できるエンジニアの育成は急務だ。過酷炉心損傷事故に対応できるレベルになるには、長年の知識と経験の上に、さらに国内外の過酷炉心損傷事故研究現場に3年間程度在職し、総合的判断能力を高める必要があるだろう。加えて、訓練された数名から成る対策室を、電力会社の本店ではなく原発敷地内に設置し、常時、現場を把握し、必要とあれば即応できる体制が望ましい。