東京電力福島第1原子力発電所の事故から、もうすぐ7年――。2017年度は3号機原子炉建屋のカバーや凍土遮水壁が完成するなど、大型工事に区切りがついた1年だった。廃炉・汚染水対策の最高責任者として毎日6000人が働く現場を指揮する東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏氏に、17年度の進捗と成果、18年度以降に進める作業や工事について聞いた(聞き手は、木村 駿=日経 xTECH/日経コンストラクション)。
廃炉・汚染水対策の2017年度の成果を、どのように見ていますか。
最も大きな成果は、何といっても作業環境の改善です。顔全体を覆う「全面マスク」が必要なエリアが減り、軽装で作業できるようになった。食堂や休憩所の整備も進み、皆で集まって仕事の段取りや互いの体調を確認し合えるようになりました。
建設現場では、アイコンタクトなどを使った意思疎通が大切です。チームの意識が統一できていないと工事の質が下がり、事故が起こりやすくなる。ましてや福島第1原発では、新しいものを造ったり、解体したり、あるいは設備を運転したりと、性格が異なる様々な作業が入り交じっていますから、ちょっとしたミスが全体に大きな影響を及ぼしてしまいます。
2014年に廃炉・汚染水対策の最高責任者に就任して以来、まるで「野戦病院」のような現場を、なんとか「普通の現場」にしようともがいてきました。それが、ようやく実現できそうなところまで来ました。
より具体的な成果を挙げるとすれば、この1年で大きく進んだのが3号機です。原子炉建屋の最上階のプールから使用済み燃料を取り出すための「カバー」を設置しました。正直言って、こんなに早く3号機に上がれる時が来るとは思っていませんでした。
いわき市の小名浜港にヤードを確保してカバーの部材を造り、入念に工事の段取りを進めたうえで、部材を福島第1原発に運び、素早く組み立てた。全ての作業を福島第1原発だけでやると、時間や放射線量などの制約で、これほど早く工事は終わらなかったかもしれません。日本の現場の知恵を改めて感じました。
これからケーブルを敷いて試運転を済ませ、18年度半ばからいよいよ使用済み燃料の取り出しを始める予定です。