東京電力福島第1原子力発電所の事故収束や廃炉に向けた工事を妨げてきた汚染水問題。その解決を目指して建設していた「凍土遮水壁」が、ようやく完成した。インタビューの前編に続き、廃炉・汚染水対策の最高責任者である東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏氏に、汚染水対策の進捗と展望について聞いた(聞き手は、木村 駿=日経 xTECH/日経コンストラクション)。
建屋内に地下水が流入して汚染水が増えるのを防ぐ「凍土遮水壁」が閉合(完成)しました。しかし、「効果がそれほど大きくなく、費用対効果に疑問符が付く」といった趣旨の報道も目立ちます。
凍土遮水壁の閉合によって汚染水の発生量は189m3/日から93m3/日に減りました。それは間違いないのですが…。「凍土遮水壁の建設にいくらかかってどれだけ汚染水の発生が減った」と単体で効果を評価されると、ちょっと辛いところがあります。
というのも、汚染水対策は様々な対策を組み合わせて効果を発揮するものだからです。例えば、汚染水対策の主要なメニューに、建屋付近の井戸から揚水して地下水の流入を防ぐ「サブドレン」があります。凍土遮水壁の完成によって、サブドレンでくみ上げる地下水が826m3/日から353m3/日に減りました。これも凍土遮水壁の大事な効果です。
汚染水対策をサブドレンだけに頼るのは好ましくありません。壊れることがあるかもしれませんから、サブドレンが使えない時に備えて、凍土遮水壁で「余力」を稼いでおくことが大事なのです。