「ロールケーキ」のような形が目を引く、福島第1原発・3号機原子炉建屋のカバー。鹿島・清水建設・竹中工務店・熊谷組・安藤ハザマJV(以下、鹿島JV)と東芝の手で2017年1⽉に始まった設置工事は、当初の予定よりも半月ほど工程を短縮して18年2月に無事完了した。廃炉の現場を約7年間にわたってリポートした書籍「すごい廃炉 福島第1原発・工事秘録<2011~17年>」の筆者が、工期短縮の秘密を解説する。
「燃料取り出し用カバー」とは、事故当時に原子炉建屋の最上階のプールで保管されていた使用済み燃料を取り出すための構造物だ。作業に使用する「燃料取り扱い機」や「クレーン」などの設備を載せ、全体をドーム屋根で覆う。ドーム屋根には風雨を遮ったり、作業中に放射性物質が飛散するのを防いだりする役割がある(形状の由来や構造設計の考え方については3月15日に公開した前編を参照)。
3号機は1・4号機に比べて爆発の規模が大きく、周辺の放射線量が高いため、カバーの建設時には作業員の被曝を減らす工夫が欠かせない。カバーを設計した鹿島原子力設計室の松尾一平設計室長は、「設計と施工が一体となった計画を追求した」と話す。
松尾設計室長はまず、カバーの部材をできるだけ大きなサイズに「ユニット化」することにした。作業員が現場でボルト接合する箇所を減らし、作業時間を短縮する狙いがある。
工事には、建屋の西と南に配置した遠隔操作式の600t吊りクローラークレーン2台を使う。このため、各ユニットの重量はクレーンの揚重能力などから逆算して決めた。
全長57mのFHMガーダー(燃料の取り出しに使用する設備を載せる巨大な橋桁)は二十数個に、高さ18mのロールケーキのようなドーム屋根は16個に分けて事前に製作。福島県いわき市の小名浜港に仮置きしておき、工事の開始に合わせて福島第1原発まで台船で海上輸送した。原発では廃炉に向けて様々な工事が並行して進んでおり、資機材を仮置きしておくスペースを確保するのが難しいからだ。