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リアルタイム被害推定─地震後10分で推定完了

 地震が発生した直後、建築関係者が最初に心配するのは建築物やインフラの被害状況だ。防災科学技術研究所の「災害情報収集システムおよびリアルタイム被害推定システム」は、震度3以上の地震が発生すると自動的に計算を始め、10分ほどで建物の被害状況を推定する。

 まずK-NET・KiK-netが観測した地震動、気象庁や自治体が提供する地震動を基に地震動分布を作成する。次に、過去の地震動と建物倒壊率から導かれた被害関数から建物全壊棟数分布を計算する。

 全国の建物の構造分類と築年数などの情報を持つモデルを作成しており、いつ、どこで地震が起こっても自動で推定図が作成できる〔図2〕。

〔図2〕2016年4月16日未明に発生した熊本地震本震の地震動に対する推定図。250mメッシュごとの建物被害棟数分布を地震発生から11分17秒後にシステムが自動で作成した(出所:防災科学技術研究所)
〔図2〕2016年4月16日未明に発生した熊本地震本震の地震動に対する推定図。250mメッシュごとの建物被害棟数分布を地震発生から11分17秒後にシステムが自動で作成した(出所:防災科学技術研究所)
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 防災科学技術研究所レジリエント防災・減災研究推進センター藤原広行センター長によると、2016年4月の熊本地震は、試験的にリアルタイム被害推定システムを動かし始めた直後に発生した。システムは地震発生から10分で推定図を作成した。翌日、研究員が印刷した推定図を関係機関に配った。地震発生から1カ月経過しても、この推定図を掲示して使っていたという。推定図は実際より大きく被害を示したが、初動の対応に大いに役立った。

 藤原センター長は、「今後の課題は建物情報の更新方法を検討することと、作成された推定図を関係者にリアルタイムで共有する仕組みづくりだ。各府省庁だけでなく、民間企業や市町村がクラウドにアクセスするだけで推定図を見られる環境を目指している」と語る。

 被災地の状況をできるだけ早く把握するために、AIが航空写真から個々の建物被害を分析する技術の開発も進んでいる。最終的に80%ほどの精度が期待できるという。発災直後はリアルタイム被害推定を活用し、その1週間後には航空写真解析による被害状況マップが発表されるようになるかもしれない。

災害用ドローン─復旧迅速化の救世主

 人や車が容易に近づけない場所に上空からアクセスできるドローン(小型無人機)は、災害発生直後の被災地の情報収集、物資などの運搬に有効な手段だ。ドローンの飛行によって収集した画像データを解析に使うほか、ドローンに小型の携帯電話基地局を搭載し、上空から一時的に携帯電話サービスを提供する実証実験などが実施されている〔写真1〕。

〔写真1〕新宿駅周辺防災対策協議会のメンバーによる実証実験。ドローンで取得した映像データから滞留者の人数などを分析し、遠隔地で対策を決定することなどを検証している(撮影:日経アーキテクチュア)
〔写真1〕新宿駅周辺防災対策協議会のメンバーによる実証実験。ドローンで取得した映像データから滞留者の人数などを分析し、遠隔地で対策を決定することなどを検証している(撮影:日経アーキテクチュア)
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 損害保険ジャパン日本興亜は、平常時は交通事故現場で、災害時は被災地で情報収集にドローンを活用している。2016年4月の熊本地震での行方不明者捜索や16年12月の糸魚川大火の現場調査、17年7月の九州北部豪雨被災地の被害状況調査などでも、災害発生直後にドローンを飛ばした。その実績から、自治体との業務連携協定が増えている。

 山間部やビル街での電波障害など課題はあるが、災害時にドローンが迅速な救助活動や復旧・復興に貢献する日は遠くない。