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「営業が売ってくれない」はあり得ない

 プロジェクトがうまくいかない例、具体的にいえばある重工業の会社がクルージング用の豪華客船の製造を途中でやめてしまったとか、旅客機の初号機出荷をあと何回延期しなければいけないのかとかも、要因は共通です。みんなの人海戦術で大きいものを何とかしようっていうのは日本の得意技ですけれども、プロセスに合わせてチームを複数立ち上げて、プロセスごとにチームで集中してやっていくのは苦手。計画を立てて設計、生産または量産して商品をマーケットに投入し、ユーザーからの最初のフィードバックを受けて初期商品を改良する、というところまでスピーディーに進めて、初めて上市といえます。

 対照的に、技術部門が「こんな新製品を造りました、でもなぜかうちの会社の営業って売ってくれない」というような状態の企業も少なくありません。社内ですら、製品ができてから突然聞かされていきなり売りなさいと。これでは営業だって売る気になりません。

 最初から、マーケティングや営業の人、技術や製造部門の人を、試作・量産化チームの中に入れておけば問題は起こらないはずです――というのがプロジェクトチームです。これを説明するのに、実に1時間ぐらいかかるわけです。

 こう説明すると、「そもそもメーカーの組織を製品化のプロセスに沿った組織にしておけばいいのでは」と聞かれることがあります。本来メーカーの組織体系は、そのつもりで構成されているはずです。しかし、新商品を造る際のプロセス、例えば量産化を検討するプロセスとか、デザインレビューに集中するプロセスとかには合っていません。既存のメーカーの組織をどう見ても、デザインレビュー専門の部課なんかありませんよね。

 既存のメーカーの組織体系は、20世紀の、造れば売れた時代の組織です。定常的に製品を製造する運用には合っているのでしょう。従って筆者は、既存の組織体系にプラスしてプロジェクトチームが必要と考えています。あくまで両方必要なのです。

 この両方を見るのは役員クラスでなければなりません。プロジェクトのリーダー、プロジェクトマネージャーはプロジェクトを見る役割ですし、既存組織の技術部門の長や製造部門の長はその役割がある。その両方を統括する役割が必要になるわけであり、その人をものづくりイノベーターMZIといっているわけです。もちろんマーケティングや営業、企画部門の長がその役割を担っても良いのです。

 既存の商品の改善も必要だし、新商品も造っていかなくてはいけません。その両方はどこかで結び付けなければならない。その橋渡しを担うのが幹部候補であるMZIであって、それは単なる部門長やプロジェクトリーダーとは異なります。

 MZIがいないとどうなるか。プロジェクトマネージャーが課長クラスだとしましょうか。技術部門や製造部門をはじめとして、既存部門の長は部長です。プロジェクトマネージャーの言うことなんか素直に聞くわけがないのです。これでプロジェクトがうまくいくはずがありません。