PR

残らないプロジェクト組織の図

 商品開発の記録というものは、メーカーにそれぞれ残っているのでしょうか。筆者がさまざまな企業で見た限りでは、どうもプロジェクトチームの組織図が残っていませんでした。ということは、組織図は明確に明文化されていない状態で、何とか製品開発ができたという状態だったとしか思えません。

 NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」では、何十社も取材されています。そこにも、プロジェクトの組織図は全然出てこないのです。それがあれば、数十年前の当時のチームの誰に聞いてみようかと、インタビューももっと効率的に深く進められるはずです。おそらく、多くの場合はプロジェクト組織の記録がなく、チームのメンバーにあいつもいた、こいつもいたというように、薄くなった記憶をたどるような状況だったのでしょう。10年前20年前の商品開発の様子はなかなか復元できるものではありません。

 メーカーとしての組織図は残っていても、プロジェクトチームの組織図がない。あるのだったら、プロジェクトXの取材班はもっと本質的な、「新商品の開発を成功させるにはこのようにすればよい」という知見を見つけられたはずです。

 メーカーによっては、これまでの技術の歩みをきちんと残さなければ、との考えで技術史を編纂しているという話を聞くことがあります。しかしプロジェクト組織をはじめ、文書がきちんと残っていないため、関係者の記憶でたどっていくしかないようです。10年前20年前のことは簡単に思い出せるものではないですし、既に退職した人も多いでしょうから、十分に再現することは難しいでしょう。そもそも、文書が残っていないから、改めて技術史を造らなければ、という話が出てくるのでしょうけれども。

 本来、プロジェクトマネジメントがきちんとしていれば、プロセスの1つとして「終結フェーズ」も実行しているはずです。プロジェクトにはざっくりいうと、立ち上げ、計画、実行、終結というプロセスをたどります。この終結フェーズはプロジェクトの記録をまとめる作業を含みますから、それを実行すれば組織として再現可能な知見になるわけです。

 記録するのはプロジェクトマネージャーですが、企業としての知見にする上ではものづくりイノベーターMZIの役割が大きい。プロジェクトマネージャーには全社を動かす力はありませんから、幹部候補たるMZIが1つひとつのプロジェクトの終結フェーズで作成したプロジェクト報告書を全社に共有させるように活動すればよいのです。現在のメーカーにはこの役割を持った人がいないのです。