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(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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 ものづくり、建設、ITの各業界において世間を大きく騒がせた大事故やトラブルを受け、企業の取り組みや制度・ルールはいかに変わったのか。過去の事故・トラブルは今、どのような形で生かされているのか。世間を騒がせた重大な事故・トラブルの教訓とは――。専門記者が徹底的に掘り下げるとともに未来を展望する。
 今回(第10回)は現場力をテーマに、三井化学岩国大竹工場の爆発事故やスルガ銀行と日本IBMのシステム構築失敗を巡る訴訟などを取り上げる。技術の伝承という難しい課題にいかに向き合っていくべきかを議論した。

参加者 浅野祐一=日経 xTECH 建設 編集長/日経ホームビルダー編集長
吉田 勝=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
中山 力=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
井上英明=日経 xTECH副編集長/日経コンピュータ副編集長
司会進行 大石基之=日経 xTECH編集長
戸川尚樹=日経 xTECH IT 編集長

――先に議論した隠蔽体質は大きな問題ですが、「現場力」が失われていることに起因する事故やトラブルも多いのではないでしょうか。

吉田 勝
吉田 勝
日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長(写真:加藤 康)
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吉田はい。2012~2014年ごろにかけてプラントの事故が多発しました。三井化学岩国大竹工場の爆発事故がその代表例です。他にも日本触媒などが事故を起こしました。

 原因の1つは、高度経済成長期に造った大型プラントの老朽化です。もう1つは、現場の技術者、特にベテランが減って現場力を維持できなくなっていることが挙げられます。若手は定常的な操業はできても、プラントの立ち上げなどに関わった経験が無いため、非常時にどういう事態が起こるかを予測できない。ノウハウを学ぶ機会も少ないわけです。

三井化学の技術研修センターにある事故関連の展示
三井化学の技術研修センターにある事故関連の展示
左は屋外に展示してある事故の残骸。右はセンターの一角にある事故関連の記事展示。事故の記憶を風化させることなく今後の教訓とする狙いがある。(出所:三井化学)
レゾルシン製造プラントの酸化反応器の概要
レゾルシン製造プラントの酸化反応器の概要
反応器内でメタジイソプロピルベンゼンを空気によって酸化する。反応器内には温度上昇を抑制するための冷却コイルが設けられている。
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 非常時を含め、あらゆる事態をマニュアル(手順書)で網羅することが理想的ですが、それは難しい。そうすると、何かちょっと変わったことが起こったとき、いろいろな知恵やノウハウを持ったベテランが現場にいないと、対応を誤り事故になってしまう。

 このように複合的な要因が相まってプラントの事故が増えているわけです。これは、今でも収まっているわけではありません。2017年にも新日鉄住金の大分製鉄所で火災がありました。化学メーカーの危機感は相変わらず強いものがあります。

「教育はどうなってるんだ」

――各社は事態の改善にどのように動いているのですか。

吉田大手化学メーカーは大がかりなシミュレーターを活用するなどして危険を体感する研修など安全教育にかなり力を入れています。さらにプラントの監視システムも強化しています。