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(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

 ものづくり、建設、ITの各業界において世間を大きく騒がせた大事故やトラブルを受け、企業の取り組みや制度・ルールはいかに変わったのか。過去の事故・トラブルは今、どのような形で生かされているのか。世間を騒がせた重大な事故・トラブルの教訓とは――。専門記者が徹底的に掘り下げるとともに未来を展望する。
 最終回は、ソフトウエア開発を中心に、品質やトラブルを防ぐ上での発注者と受注者のあり方を考える。

参加者 浅野祐一=日経 xTECH 建設 編集長/日経ホームビルダー編集長
吉田 勝=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
中山 力=日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長
井上英明=日経 xTECH副編集長/日経コンピュータ副編集長
司会進行 大石基之=日経 xTECH編集長
戸川尚樹=日経 xTECH IT 編集長

――ITシステムの開発については、ノウハウの継承が相当に難しいと指摘されています。そもそもシステム開発の分野で、一定の品質を維持するための基準やルールはあるのでしょうか。

井上ITシステムの分野では、建築基準法に相当するような法律がありません。ですから、例えばIT企業A社がある案件を受注したとすると、自社のやりたい方法で構築することができてしまいます。しかし、完成後のITシステムを後になってからB社が改修したり機能追加したりしようとすると、A社のやり方や癖のようなものを知らないので非常に難しいんです。多重下請けという構造は、IT業界も建設業界と似ていますが、建築基準法のような守るべき品質基準がない点は全く違います。

中山 力
中山 力
日経 xTECH副編集長/日経ものづくり副編集長(写真:加藤 康)

 基準がないので、極論すればスーパーSEが1日で仕上げるプログラムを、そうでもないSEだと10日かかってもできない、なんてことが起こり得ます。建設業界には基準法などがあるから、コストは多少変わるかもしれませんが、業者が変わっても出来上がってくる建築物や構造物は極端に変わりませんよね。

 ITシステムの構築はブラックボックス化しているので、発注者は基本的に料金主体で比較します。システム構築費用の提示価格は、業者によって全く違います。「御社の要求仕様はこれぐらいの機能でできるから100万円です」と言うSEと、「1000万円です」と言うSEがいてもおかしくない。極端に言うと、それは顧客の要求仕様に関する解釈の違いということになってしまいます。

中山昨今、AI(人工知能)やIoTのシステム導入が盛んですが、いったん発注すると、その会社から他のIT企業に変えにくくなってしまうということですね。

井上はい。極論すると特定のシステムベンダーにがんじがらめになります。IT業界では、「ベンダーロックイン」と呼ぶ状態です。これが癒着や慣れ合いになっていきかねません。

吉田それが品質偽装などの温床になるかもしれませんね。