今回はテレワークのコミュニケーションに関する下記の悩みを取り上げる。

リーダーはリモートでのチームビルティングに慣れていく必要がある
「リモートワークでコミュニケーションがうまくいかない」――この手の悩みを、筆者はほぼ連日のように企業の管理職やメディアから受けている。
無理もない。日本の多くのビジネスパーソンは、これまで対面ベースでのコミュニケーション、対面ベースでのチームビルディングに慣れきってしまっているのだから。
だからといって、出社による対面のコミュニケーションを強いるのは今さらいかがなものか? もちろん対面のコミュニケーションのメリットは認めるが、出社前提、対面前提の働き方は以下の観点でデメリットをもたらし得る。
(1)スピード
リモートワークおよびリモートワークを支えるITツールの何よりのメリットは、場所や時間を問わず、非同期のコミュニケーションが可能になることである。移動時間を本来業務に充てることができるし、相手の出社を待たずしてコミュニケーションも行える。
たとえ全員がオフィスに出社していたとしても、たとえば四六時中マネジャーやリーダーが会議に出席している場合など、メンバーとのコミュニケーションや意思決定が滞りがちだ。チャットやワークフローシステムを駆使すれば、会議中の隙間時間や「待ち」の時間の合間に、チャットベースで相談したり、決裁などの意思決定もしたりすることができる。総じて、対面ベースとリモートワークベースの仕事のやり方とでは仕事のスピードに大きな格差が生まれる。
(2)事業継続性
リモートワークベースの仕事のやり方に移行している組織は、事業継続性の面でも強い。なぜなら、場所を選ばず業務を遂行するやり方に慣れているからである。新型コロナウイルスのような感染症、甚大になる自然災害、増える交通トラブル……このようなリスクに向き合って事業を安定的に継続するには、日ごろからリモートワークベースの仕事のやり方に慣れている必要がある。
(3)有能なリソース確保と価値創造
出社前提の仕事のやり方は、その組織に関わることのできる人を限定することを意味する。その会社に通勤可能な人しかその組織やプロジェクトに参画できない。この機会損失は大きい。配偶者の転勤により、退職を余儀なくされる人もいる。どんなに優秀な人材であってもである。
また、通勤可能かどうかは会社が決めるものではない。本人が決めるものである。
会社「片道1時間以内ですので、通勤可能であると判断します」
社員「いやいや、○○線なんて混雑はひどいわ、本数は少ないわ、よく止まるわで、とても乗れた代物ではありません」
通勤という間接業務、無価値かつ無報酬労働によって、人材が無駄に疲弊し価値創造が妨げられるのはばかげている。
最近では、複業(パラレルキャリア)の人材を活用する企業も増えてきている。筆者が話を聞く限り、いずれの企業もリモートワーク前提だ。せいぜいキックオフや節目のタイミングで任意で顔合わせをする程度だと言う。複数の組織に参画する人だからこそ、いちいち移動して出社していたら体がもたないし、価値創出にフルコミットできない。都度対面を求めていたら、複業人材が過労で倒れてしまう。
とりわけ、地理的ハンディのある地方都市の企業においては、その地域にない知識や能力を借りる意味でも複業人材による部分参画のポテンシャルは大きい。率先して、リモートワーク前提の環境を構築し、かつ自らリモートワークに慣れていくに越したことはない。