PR
全2667文字

「新システム? 現行通りの仕様で作ってくれればいいよ」
「その“現行”が分からないんですけれど……」
「………」

 禅問答のようなこのむなしいやり取り。筆者もさまざまなIT職場で見聞き(筆者もSIer勤務時代に体験)している。

 「現行通りでお願い」――悪気なく発せられるこのフレーズ。「あ、現行通りでいいんですね。ならばラクだ!」と喜んではいられない。IT職場を混乱に陥れる「悪魔のフレーズ」なのである。

「現行でお願い」
「現行が分からん」
「設計書が欲しい」
「設計書が見当たらん」
「相談しよう」
「そうしよう」
 ……
「決まらん!」

 はないちもんめさながらの会話が今日もどこかのIT職場で繰り広げられている。なぜ、こんな始末になってしまうのだろうか。主立った原因を見てみよう。

「現行通りでお願い」の問題地図
「現行通りでお願い」の問題地図
[画像のクリックで拡大表示]

原因1:要件定義書や設計書が無い/アップデートされない

 ドキュメントを残さない。要件定義書も設計書も作っていない。文書化された業務フローもシステムフローも無い。あったとしても、抜け漏れだらけ、不備だらけ。あるいは変更箇所がアップデートされていない。

 もともとドキュメントを作らない文化なのか、あるいはむちゃな要求や納期に追われてドキュメントの作成やアップデートを「後回し」にしてそのままになったのか、はたまたエンジニアにドキュメント作成能力や文章能力が無いのか。残されているのは、口頭で語り継がれた要件や注意事項のみ。それとて網羅性に欠ける。まるで口伝の民話のごときである。

 苦労するのは後任の担当者だけではない。顧客あるいは利用者にも迷惑をかける。

 このドキュメント不在問題は、ウオーターフォール型の開発・運用の現場のみならず、アジャイル開発の現場でも散見されるから厄介だ。アジャイル開発は、ドキュメントを残さず手早くITサービスを開発してリリースすることだと勘違いする人たちもいるようで、なかなか悩ましい。アジャイルとは変化に迅速に対応しやすい開発手法であり、雑にものごとを進める手法ではない。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
有料会員と登録会員の違い