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 今回取り上げる悩みはこちらだ。

ユーザー企業の業務システム担当者からの悩み
 当社は事業部の独立性が高く、それぞれ縦割りのシステム担当グループを置いています。システム担当グループ間での情報・ノウハウの共有はほとんどありません。いわゆる「サイロ化」の状態が伝統的に続いています。先日、ある事業部のシステム担当グループがクラウド上のシステムで大きなトラブルを引き起こし、上(上級管理職)からの指示で一時的なヘルプに入りました。私が所属しているシステム担当グループからすると初歩的なミスでした。今回の件で、改めて全社で情報・ノウハウを共有する必要性を感じています。先進企業では「CCoE(クラウド・センター・オブ・エクセレンス)」のようなクラウド活用の中核組織をつくっているケースがあると聞いています。サイロ化したシステム担当グループ同士が連携して新技術を活用していくにはどのような形態が望ましいのか、模索している状況です。
(出所:123RF)
(出所:123RF)

技術軸の社内コミュニティーから始めてみてはどうか?

 組織のサイロ化は、日本の多くの組織にとってなかなか悩ましい問題である。トップが改革や変革の必要性をどんなに熱く訴えても、「全社一丸となって」「グループの総力を挙げて」などと講話したところで、「総論賛成、各論反対」で従来の縦割り組織そのままに、まるで横連携をしようとしない。あるいは「誰が音頭を取るんだ?」のまま誰も動こうとせず、いつまでたっても横連携が進まない。

 ある意味で仕方がない。なぜなら、組織体制も評価制度も事業部単独で成果を出すスタイルに最適化してしまっているからである。

  • そもそも横連携するきっかけも時間もない
  • 横連携をしても評価されない。自部門の手柄にならない
  • どの事業部も課された数字を上げるので精いっぱい。横連携しようものなら「余計なことをするな」と中間管理職にストップをかけられる
  • 事業部門のトップ同士がライバル関係。部下が横連携しようとすると、機嫌を損ねる
  • セキュリティーが厳しく、他部署のフロアに立ち入りが出こない/物理的にロケーションが離れている/電子的に保存されたドキュメントも部門を越えて閲覧することすらできない

 この状況で、横連携を求めるほうが間違っている。従って、強力なトップダウンの意思および指示のもと、いわゆるCCoEのような部門横断の専任組織が編成される。大企業を中心にうまくいき始めた事例も出てきており、その具体例と要諦は書籍『DXを成功に導くクラウド活用推進ガイド CCoEベストプラクティス』(黒須義一ほか共著、日経BP)を参照されたい。

 しかしながら、よほど強烈なトップダウンが利く組織でもない限り、CCoEのような部門横断型の専任組織を立ち上げるにも労力が要るであろう。そこで、まずは読者諸氏のそれこそ「半径5メートル以内から」、縦割りの組織カルチャーに風穴を開ける行動について考えてみたい。