情報システム部門が業務部門の暴走を止められず、ITベンダーと対立。訴訟に発展(そして敗訴)。組織のトップがITベンダーを下に見る発言をして炎上――。
こんな切ないニュースが後を絶たない。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に「イノベーション」。政府も行政も企業トップも口では言うものの、古いマインドとヒエラルキー構造に裏打ちされた「本性」が露呈する。そのマインドもカルチャーもおおよそトランスフォーメーションにもイノベーションにも果てしなく遠い。「残念な業務部門」「残念な情報システム部門」「残念な経営者」が織りなす三重奏の悲劇。今回は、これら3つのプレーヤーを徹底的に斬る。
「残念な業務部門」は企業組織の経営リスク
トップバッターは業務部門。企業や官公庁や自治体が運営する、情報システムの利用部門と捉えることもできる。ここでは総称して「業務部門」と呼ぶことにする。
- ・次から次へと追加要件を乱発し、システム開発プロジェクトを混乱させる
- ・ところが、当初の納期は必達。決して譲らない
- ・上から目線で、情報システム部門やITベンダーを「従える」「どう喝する」
業務部門の、いわゆるエース級のベテランと呼ばれる業務のプロが強大な権力を持ち、このようなトラブルを生む。ヘタレな情報システム部門は、業務部門のエース級のベテランの言いなり。そのままITベンダーに丸投げする。
百歩譲って、業務部門の言うことが「イケている」ならまだいい。しかしながら往々にして、このような横暴な業務部門やその担当者が描く業務プロセスは「大したことがない」。時代遅れ、かつ属人化した自己満足なアート作品の域を脱しないのである。
いや、かつてはイケていたのであろう。しかし時代や社会構造や技術や人の行動パターンの変化に伴い、その業務プロセスも知見も陳腐化してしまっている。ところが業務部門はそれに気付かない。あるいは、今までのやり方を守ることが自分たちの存在意義だ、と壮大な勘違いをする。イケていない残念な業務部門は往々にして「井の中のかわず」「裸の王様」である。
- ・その企業のやり方しか知らない
- ・その業界のやり方しか知らない
- ・変えたくない、変わりたくない
- ・なおかつ、社歴と権力でもって社内外の「Yesマン」だけを従えてきた
こんな業務部門がつくった業務がイケているはずない。せっかく加わってくれた中途採用の社員、ITベンダーなど社外の人たちや他業界の人たちの意見には耳を傾けず、「ムラ社会」を必死で維持しようとする。こうして、社内論理ゴテゴテ&社内用語モリモリの、その組織でしか通用しない残念な「プロ仕様」「ガラパゴス仕様」の業務プロセスが温存される。そして、時代遅れな業務部門による、時代遅れな業務部門のための、時代遅れな業務プロセスを反映した、使いにくく高コストな業務アプリケーションの出来上がり!