しかしながら、情報システム部門の人たちは悪気なく下請けマインドである。無理もない。長らく「下請け」扱いを受けてきたのだから。業務部門に物言いをつけたり、主体的に問題を言語化したり、提案したり、ファシリテートしたりする経験もスキルも伴っていないことが多い。情報システム部門が、下請け&井の中のかわずで、世の中のトレンドやクラウドサービスを知らないこともある。
こうして、どんどん業務部門の「しもべ」になる。その自信不足が、社内プレゼンスの低下と情報システム部員のマインド低下を招く。権限も与えられない。負のスパイラルである。
自社のコンプライアンスやブランドを守る意識の希薄さも問題だ。前述の通り、業務部門の暴走は経営リスクそのものである。にもかかわらず、業務部門の暴走を止められない、ITベンダーなど社外の取引先にも迷惑をかける。取引先も、一歩プロジェクトルームを出れば未来のお客様や、未来の従業員になり得る。システム開発プロジェクトは、大事な社外とのブランドタッチポイントなのである。ブランドマネジメントの意識を持ち、社内のイケていないいんぎん無礼な人たち、社会人、いや人として恥ずかしい振る舞いをする自社の管理職や社員に「No」を突き付けられる、そんな情報システム部門の責任者や担当者はどれだけいるだろうか?
社内の連携不足も大きい。暴走する業務部門の担当者は、組織のコンプライアンスリスクでありブランドリスクである。人事部門や広報部門、場合によっては経営陣に通報し、企業組織として本人に厳しい処遇を施す。情報システム部門には、その責任感と行動が求められる。
「それでも当社は業務部門が強くて……」「事例を教えてください」
はあ? 何をおっしゃる。そういう受け身なマインドだから、いつまでたっても下請け体質から脱却できないのです!(解決方法や事例はいくらでもある。外に出て、あるいは時間やお金を使って汗をかいてはいかがか)
経営者は「IT現場の問題=経営マター」と捉え本気で解決せよ
そもそもこのような愚行とリスクを放置してしまっているのは、経営責任でもある。
- ・ITに対する無関心さ&危機感のなさ
- ・コンプライアンスリスク、ガバナンスリスク、ブランド毀損リスクに対する意識の欠如
イケていない業務部門の暴走は経営のリスクである。にもかかわらず、「ITのイシュー」「情報システム部門が解決すべき問題」「個人の問題」としか思っていない。
このような社内の問題が、訴訟やインターネット上の「炎上」に発展しないと経営マターにならない組織風土やコミュニケーションプロセスにも問題がある。いずれにしても、これは経営の問題である。とりわけ、IT現場の問題がスタンドアローン、すなわち縦割りな問題としてしか扱われないマインドとカルチャーがリスクだ。
繰り返しになるが、残念な業務部門を甘やかすから図に乗る。今まで、誰も暴走を止めてこなかったのである。その暴走は、情報システム部門だけで止められるものではない。下記のように企業全体で取り組む必要がある。
- ・コンプライアンスの問題として法務部門が動く
- ・ブランド毀損として広報部門が動く
- ・ブランド毀損およびハラスメントやメンタルヘルス対策として人事部門が動く
「取引先への上司の振る舞いが恥ずかしい……」「自社が恥ずかしい……」
こう思っている若手や中堅社員は案外多い(とりわけ自社の看板にあぐらをかいている大企業や地方都市の中堅企業で目に付く)。これは人事部門の関心事である「エンゲージメント」「採用」「定着」にも影響する。