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 「ちょっとのミスでも、猛烈に怒られつるし上げられる」「そのくせ、ミスを起こさず当たり前に運用していても評価されない」「それどころか、人も予算も減らされる」――

 いずれも、ITのインフラ維持など運用現場の管理者やエンジニアからよく聞く悲痛な叫びである。筆者もIT運用の現場に勤務した経験があり、その痛みを切ないくらいに感じている。今回は、日々の当たり前を支えるIT運用の現場の理不尽なリアルにスポットライトを当てる。

「演技力」「大げさな報告力」「非を認めない胆力」だけが育まれるIT職場の問題地図
「演技力」「大げさな報告力」「非を認めない胆力」だけが育まれるIT職場の問題地図
(出所:あまねキャリア)
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開発のミスは許されるのに、運用のミスはつるし上げられる理不尽

 「いいよなあ開発部門は。あいつらは多少のミスは許されるのに、こっちは……」

 こう漏らすのは、大手製造業A社の情報システム部門に勤務する男性。30代半ばのサブリーダーである。彼の担当は業務システムの運用と保守。能力面でも年齢の面でも現場のエース級であるはずだが、モチベーションはお世辞にも高いとは言えない。

 いわく、開発部門は果敢に新しいことにチャレンジできる。多少のミスは許される。一方、運用保守部門はそうはいかない。ひとたびヒューマンエラーによるトラブルが起きれば現場は騒然となる。

 普段会ったこともない役職者が突然現れて叱責してくる。直後、再発防止策検討会議という名の「つるし上げ」が行われ、現場のリーダーや担当者が見せしめにされる。そこで決まった再発防止策は、「ダブルチェック、トリプルチェックの徹底」など「その場で思い付きやすく、かつ現場の手間を増やすだけ」のものばかり。これで業務の品質も、現場のモチベーションも上がる訳がない。