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 もちろん開発と運用保守とでは事の重大さが違う。まだリリースされていないシステムや機能と、今動いて使われているそれらとでは、ミスやトラブルが起きたときのインパクトは異なる。社員全員や社会にインパクトを及ぼすような業務システムやITインフラであればこそ、慎重さが求められることは筆者が強調するまでもない。

 しかし人間が作ったシステムに完璧などない。にもかかわらず、ミスに厳しすぎるカルチャーはいかがなものであろうか。ましてや、運用保守部隊だけを責める、さらにはリーダーや担当者個人の懲罰人事で済ませようとするなどもってのほかである。その温床となっている仕組みやカルチャーこそが瑕疵(かし)であり、組織として向き合うべき問題なのだ。

 こうして、運用現場のリーダーや担当者は組織に不信感を募らせる。開発のメンバーが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「イノベーション」「アジャイル」などを掲げて、新しいチャレンジやトライ・アンド・エラーをするまぶしい様子を横目に、運用保守部隊のメンバーのモチベーションは低空飛行。無力感を募らせ辞めていくメンバー、「言われたことだけを淡々とやる」マインドに変わってしまったメンバー、「給料さえもらえればいいや」と割り切り考えることをやめてしまったメンバー……現場の景色が曇りのち雨模様に変わっていく。

評価されるのは納期までに押し込んだ人と火を消した人だけ

 そもそも、この手の職場は評価制度と評価風土(?)にも大きな問題がある。

 「評価されるのは、納期と予算通りに無理やりプロジェクトを終わらせたプロマネ(プロジェクトマネジャー)や開発者。プラス、せいぜい火消しをした人だけです」

 なるほど、これまたよくある話だ。上層部や顧客は、とにかく納期通り、予算通りにシステムをリリースしてくれればそれでよい。現場の細かいことはよく分からないが、とにかく大きな問題を起こさずに立ち上げてくれ。それが本音であろう。

 これがうまくない。言葉は悪いが、雑に早く立ち上げたもの勝ち。プロマネや開発担当者からすれば、それが全てだ。とっとと終えて、次のプロジェクトにシフトしたほうが実績も身に付き評価も上がる。

 最悪火を噴いても、火消し役がなんとかしてくれる。叱責されるどころか「さすがだね。難局を乗り切って、システムを予定通り立ち上げてくれた。ありがとう」と上層部から感謝され、プロマネも開発担当者も火消し役も英雄のごとく高く評価される。なんなら、開発段階での火噴き体験と火消し体験は武勇伝として語り継がれる。

 「終わりよければすべてよし」

 ちょっと待った。引き継いだ運用保守部隊からすればたまったものではない。開発部隊の終わりは、運用保守部隊の始まりである。

 納期や予算に押し込むようにして無理やり作られたシステム。問題がない訳がない。運用しにくい、維持しにくい、変更に対応しにくい、問い合わせ対応などのサポートもしにくい……そんなシステムをおとなしい(あるいはおとなしくなってしまった)運用保守担当者は文句も言わずに淡々と運用する。まるで「定め」と言わんばかりに。