本連載「IT職場あるある」は2021年9月から基本的に毎月2本の記事を掲載することになった。毎月の1回目は、IT担当者や責任者の皆様の悩みに筆者が答える。2回目はこれまでと同様に、筆者がテーマを選定しIT職場の問題地図をひもとく。
新企画の1回目の悩みはこちらだ。

沢渡の回答:説明する必要なし
まずもって、落選させた理由を個別に懇切丁寧に説明する必要などない。あなたが多忙ならそんなことに時間を使っている暇はないし、何よりそもそもDXのアイデア募集なのに、DXの箸にも棒にもかからない不満をつらつら言ってくるほうが間違っている(とはいえ、言いたい気持ちも分かるが……)。
それでも説明対応するなら、個別の回答ではなく一括かつポータルなどで一斉に「DXに該当しないアイデアは不採用とした」のような採用基準とともに告知すれば十分だ。既存のITサービスの開発・運用保守担当が別にいるのであれば、現場レベルの業務改善やIT環境への要求はその担当者に回して対応を依頼すればよろしい。
DX推進担当者は、DX推進およびDXマインドがある人たちに(まずは)フルコミットすべし。そして必死に成果を出すべし。そうしないと、DX推進担当者はどこで何をやっているのか分からない人たち、何も成果を出さない人たちになりやすい。そうならないためにも、DXに関係しない雑多な対応は全力でスルーすべきなのだ。
また、この手のアイデア募集は、社員のリテラシーレベルのアセスメントと捉えたほうがよい。DXのアイデアを募集したにもかかわらず、DXとは程遠い現場の業務改善レベルの要望や、IT環境改善の要望しか出てこない。それは、社員のリテラシーがその程度ということだ。ここを正しく問題化したほうがよい。
DX推進担当を置いているということは、会社はDXにそれなりに真剣なのであろう。にもかかわらず、社員のリテラシーはそのレベルに達していない。この点は、会社の問題としてIT部門トップや経営層に問題意識を持ってもらいやすいはずだ。
従ってDX推進担当のあなたがまず向かう先は、アイデアを出した社員ではない。役員会議室である。経営陣の理想と現場の意識やスキルのギャップをどう埋めるかについて、IT部門の首脳陣や経営陣と真剣に議論し、対策を講じるべきだ。
しつこいくらいにポリシーを発信する
そうはいっても、情報発信の現状の仕方には再考の余地があるかもしれない。
- DX推進担当が考えるDXとは何か?
- 何がDXで、何がDXではないか?
- DXではない、IT環境の改善要望はどこに声を上げればよいか?
これらを部門として担当として、社内に発信していただろうか。