全2568文字
PR

 本連載では2021年9月から隔回でITエンジニアの悩みに答えている。今回取り上げる悩みはこれだ。

大手ITベンダーに勤めるシステムエンジニア(SE)の悩み
 勤務先はもともと独自のクラウドサービスを提供しており、その後に顧客からの要望に応じて、競合する海外大手のクラウドサービスもパートナーとなって取り扱うようになりました。しかし会社の方針として自社クラウドを優先して販売するように言われています。そのため顧客にとって最適なシステムを提案できないことがあり、葛藤があります。自社の利益を追求する経営方針は理解できるのですが、このままでいいのか悩んでいます。
(出所:123RF)
(出所:123RF)

 悩ましい問題である。この葛藤は、職人(プロ)とサラリーマンのジレンマでもある。会社に寄るか? 自分に寄るか? 今後のキャリアを含めて自身のスタンスや仕事観を見つめ直すよい機会であるとも考える。正しく向き合っていこう。

会社に寄る場合

 このSEの方も指摘している通り、自社の利益を追求するのは経営方針としてある意味当然であり、ここを否定してしまったら企業組織が成り立たない。よって会社の経営方針が「自社クラウドを優先して販売する」であれば、それに従うほかないであろう。サラリーマンである以上、そうするしかない面もある。

 会社にそのまま寄り添うのであれば、とにかく自社クラウドを推すしかないであろう。ただ、この会社の経営方針には一つ気になる点がある。その点については後述する。

自分に寄る場合

 顧客の課題解決にフルコミットしたい。そのための手段は自分で考えて自分で選びたい。この姿勢もプロのエンジニアやビジネスパーソンとして大変重要である。

 思いが強ければ強いほど、自分が信頼できない製品やサービスを担がされるのはつらいものだ。自分自身が自社というベンダーにロックインされている構図である。

 自社製品のしがらみから自由になりたいのであれば、ベンダーフリーのシステムインテグレーターやコンサルティングファームに転職するか、フリーランスのエンジニアに転身するのがよかろう。あるいは、事業会社のシステム担当職に転職する方法もある。自分に寄るとは、そういうことだ。

 とはいえ、現職のままでどうしたらよいか。このSEの方が抱える悩みのポイントはそこであろう。