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 「いやー、参っちゃいました……」

 先日、筆者が懇意にしているITベンチャー企業の取締役からこんなメッセージを受け取った。

 彼女が取締役を務めるこの会社は、企業向けのクラウドサービスを提供している。ある日、大企業の情報システム部門から引き合いを受けたとのこと。話が進み、受注する流れに。ところが彼女はその後に先方から言われた一言に驚く。

 「このサービスの構築と運用に関わる、技術者の経歴書を提出してください」

パッケージの教育プログラム利用に独自の書類提出を求める大企業も

 クラウドサービスを利用するのに、相手方の技術者の経歴書を求める。何とも理解に苦しむ話である。この情報システム部門の担当者は、クラウドサービス、いや、サービス提供型のビジネスモデルを分かっているのだろうか。

 これまでの受託型のシステム開発のお作法そのままに、悪気なく相手に経歴書の提示を求めている可能性も否めない。クラウドサービスの事業者を、請負や派遣やSESのベンダーと勘違いしているのであろうか。そうであるにしても、個人の経歴書や履歴書を求めるのは契約形態によってはNGまたはグレーであるが……その点についてはいったん脇において話を進める。

製造業型のプロセス&ルールを踏襲する情報システム部門の問題地図
製造業型のプロセス&ルールを踏襲する情報システム部門の問題地図
(出所:あまねキャリア)
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 筆者も最近、似たような経験をした。当方が提供する、とある人材開発・組織開発プログラム(テーマはDX関連)に関する話だ。これは、れっきとしたパッケージサービスであり、金額、申し込み方法、支払い方法はWebサイトに明示している。

 ある日、ある大手製造業の情報システム部門から申し込みがあった。そこまではよい。

 まもなく、その部門の経理担当者(と思われる方)から一通のメールが。ファイルがいくつか添付されている。取引先登録書類を提出せよとのこと。お約束のように押印欄まである。