全3721文字
PR

 値上げスパイラルが止まらない。

 世の中、どこを見回しても値上げの嵐である。とまらない円安、半導体などの原材料の供給不足やエネルギー資源の高騰。そしてITエンジニアをはじめとする、プロフェッショナル人材の人件費も高止まりしつつある。この潮流は、情報システム部門などのIT職場においても人ごとではない。

 「価格交渉して下げさせろ!」

 ともすれば、旧来型の気合・根性論で押し切ろう(押し切らせよう)とする経営陣とどう渡り合い、どうサバイブしていくか? 今回は、値上げ時代における情報システム組織の立ち回り方を考えてみたい。

相次ぐ値上げや価格高騰に苦しむ情シス部門の問題地図
相次ぐ値上げや価格高騰に苦しむ情シス部門の問題地図
(出所:あまねキャリア)
[画像のクリックで拡大表示]

クラウド利用料やライセンス費用、いよいよ値上げの波が押し寄せてきた

 SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を筆頭に、いわゆるクラウドサービスやライセンスの値上げが徐々に始まっている。外資系ベンダーが提供するサービスの多くは、米ドルベースで価格が設定されており、ゆえに為替変動の影響をダイレクトに受けやすい。

 と、そこまでは直感的に理解できるが、最近になって国産ベンダーのクラウドサービスにも値上げの波が押し寄せてきた。

 いわく、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloudなどのプラットフォームを利用して自社サービスを提供しており、それら外資系ベンダーの値上げの影響をもろに受けている。よって、値上げせざるを得ない、価格に転嫁せざるを得ないとのことだ。外資系ベンダーはもちろん、国内ベンダーが提供するクラウドサービスにも値上げの波。この流れは当面続くであろうと予測される。

 値上げ基調は、クラウドサービスの利用料にとどまらない。

 人件費も高騰しつつある。とりわけ、優秀なITエンジニアは「奪い合い」の様相を呈しており、これに伴って人材獲得コストと人件費も勢いよく上昇している。最近では新卒の優秀なITエンジニアに1000万円、2000万以上の報酬を出す企業も出始めたほどだ。

 この流れの中、都内に本社を構えるあるスタートアップ企業は地方都市の拠点開設を始めた。東京をはじめとする大都市では奪い合いが激しく、価格高騰が進み、優秀なIT人材を獲得できない。スタートアップのスケール(事業拡大)スピードに合わせてタイムリーに人材を得られない。よって、競争も賃金上昇カーブも比較的緩やかな地方都市でのIT人材の採用や育成に力を入れ始めたとのことだ。

 同様の理由で、シンガポール、マレーシア、ベトナムなどに進出し始めたスタートアップもある。彼ら/彼女たちの地方進出や海外進出の狙いは新規顧客獲得や、現地でのマーケット拡大ではない。ITエンジニアの獲得基盤の拡大なのだ。

 加えて、情シス部門は新技術の習得やマネジメントスタイルのアップデートなど、技術者や管理職の育成や学習にも投資しなければなるまい。そこをおろそかにすると、部門の成長、企業の成長、さらにはIT人材のエンゲージメントの維持向上すべてにブレーキがかかる。

  • クラウドサービスやライセンス料の値上げ
  • ITエンジニアの人件費高騰
  • 人材育成への投資

 これら3つにどう向き合い、どう渡り合っていくか? 情シス部門の手腕と振る舞いが試される。