「リモートだとコミュニケーションがうまくいかない。元の働き方に戻せ」
こう言って、旧来の出社型に戻す企業が出てきている。つい先日も大手IT企業が「特段の理由がない限り、原則として週4日出社」を発表。インターネット上でも物議を醸した。
「元の働き方」に戻す。それは組織にとって、働く個人にとって、ひいては日本社会全体にとって本当によいことなのだろうか?
「リモハラ」はリモートワーク環境のせい?
一方で、「リモハラ」(リモートワークハラスメントの略)なるものも社会問題になり始めている。リモハラとは何か。日経クロステックの記事「広がるリモートハラスメント、上司による過度な監視が横行」から引用する。
「リモハラはテレワーク中のビジネスパーソンがコミュニケーションを取る相手に対して不快感を与える言動を指し、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)も含む」
関連記事 広がるリモートハラスメント、上司による過度な監視が横行以下は代表的なリモハラ行動である。
- ①過度な監視を行う
- ②マウンティングやプライベートへの介入や干渉を行う
- ③即レスを求め過ぎる
①過度な監視を行う
リモートワーク化では、メンバーの行動が見えにくい。
「サボっているのではないか?」「進捗が分からない」
このようなマネジャーの不安により、あるいはマネジャーのさらに上のマネジャーからの圧力により、在席状況や進捗を常時ないし高頻度で確認したり、プレッシャーをかけたり、いわゆるマイクロマネジメントに走ってしまう。それが、メンバーにストレスを与える。中には「部下を監視することが管理職の責務」なる信念のもと、悪気なくマイクロマネジメントをするマネジャーもおり、なかなか悩ましい。
②マウンティングやプライベートへの介入や干渉を行う
リモートワークは、「デジタル密室空間」を作りやすい。ビジネスチャットのDM(ダイレクトメッセージ)やオンラインでの1on1ミーティングなどは、第三者に話を聞かれることのない空間である。故に、気をつけないとマウンティング行動(自分の方が相手よりも立場が上であること、また優位であることを示そうとする行為や振る舞い)や、プライベートへの介入や干渉が起こりやすい。
③即レスを求め過ぎる
ビジネスチャットなどを活用し、いつでもどこでも仕事ができる環境はスピード感あるコミュニケーションやコラボレーションができる大いなるメリットがある。一方、「すぐにレスを求める」圧力や言動を与えると、これまた相手にとってストレスとなり人間関係がぎくしゃくする。
ここで考えてみてほしい。上記はいずれも、リモートワークゆえに起こる事象なのだろうか? もちろん「デジタル密室空間」などハラスメントが起こりやすい環境があるのも事実である。しかし、このようなハラスメント行動を起こす人は、オフィスにいてもマイクロマネジメントをしたがるだろうし(あるいはマネジメントした気になっていて、その実仕事の中身はまったく見ていない)、個室の1on1でマウンティングしたり、あるいは突然の声がけと即レスの要求で相手にストレスを与えたりしているのではなかろうか?
「交通事故が起こるから、道路を閉鎖しよう。車を無くそう」
リモートワークに関しても、そのような発想になっていないだろうか? それでは組織も社会も健全に発展しない。