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 今回取り上げる現場の悩みはこちらだ。

企業のDX推進担当者からの悩み
 商品企画部門との兼務で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進室に所属しています。DXの施策を進めるため、小規模な既存システムの1つを改修する必要が生じました。IT部門に相談に行ったところ、そのシステムは担当者が明確に決まっておらず、次長が対応してくれました。聞くと、10年以上前に外部の開発会社に丸投げしてつくったシステムで、IT部門の誰も中身が分からないとのことです。しかも開発会社との関係が切れていて、「改修できるか分からない」と人ごとのように言われてしまいました。DXを進めようとすると、一事が万事こんな感じで、既存システムやIT部門がネックになります。IT部門にはシステムの運用保守という重要な業務があるのは理解していますが、DXへの参画意識を持って協力してもらう方法はないかと悩んでいます。
(出所:123RF)
(出所:123RF)

そもそも既存システムやIT部門に気を使うのが正しいのか?

 最初に根本的な問いかけをしたい。「DX」とは何か?

 DXとはデジタルトランスフォーメーションであり、組織変革である。デジタル技術を活用して既存のビジネスモデルや働き方を抜本的に変え、組織の新たな「勝ちパターン」を実現することを意味する。そのためには、破壊的イノベーション、すなわち今までの仕事のやり方やカルチャーをも大胆にスクラップ&ビルドする必要さえある。

 そう考えたとき、既存システムや、古い考え方のIT部門に足を引っ張られて前進できないのはいかがなものか。さまつとまではいわないが、細々としたシステム改修の議論を進めても、手に入れられる果実は小さい。それよりも重要なのは「今の仕組みの延長線上で、目指す未来の姿が実現できるか」。ここを議論したほうがよい。

 思い切って、既存のシステムは無視して全く新たなサービスをつくり直す。IT部門は放っておいてDX推進部門の進められる範囲でとっとと進めてしまう。このような大胆さも必要ではないか。私たちの取るべき道は、次の3つのうちのいずれかである。

  • トップダウンで強制的に変えてしまう
  • 民主的な働きかけや育成で中から変える
  • そのまま停滞して衰退する

 しかしながら、最後の「そのまま停滞して衰退する」はできることなら避けたいであろう。よって、ここでは「トップダウンで強制的に変えてしまう」「民主的な働きかけや育成で中から変える」の2つを詳しく見ていこう。