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 経営に資する情報システム部門、IT組織になるためにはどうしたらよいか? 部門長は常に頭を悩ませていることであろう。いや、部門長だけに限らない。社内プレゼンスが低く、評価されない、待遇がよくならない。その負の状態の組織に、問題意識や成長意欲が高い人であればあるほどエンゲージメントを下げて辞めてしまう(あるいは本来優秀なのに物言わぬおとなしい人になってしまう)。

 一方で、情シス組織の人たちは間違いなく、他部門にはない強みを有している。その強みはDX(デジタルトランスフォーメーション)においてはもちろん、「プロジェクト型」の業務が増えつつある時代、「ダイバーシティー(多様性)&インクルージョン(包摂性)」などが求められる時代に、間違いなく他部門の課題解決や経営課題の解決での武器となる。

 年の瀬の12月。最後はポジティブに1年の振り返りの意味も込めて、情シス組織の「ウリ」と「強み」を言語化してみたい。

大企業の人事マネジャーが発した衝撃の一言

 「当社の社員はWBS(Work Breakdown Structure)を書く能力や習慣がないのです……」

 先日、ある日系大企業の人事部門のマネジャーがため息交じりにこぼしていた。同社は社内横断のプロジェクトを立ち上げ、部門や職種を越えた協働(コラボレーション)による課題解決力の向上に力を入れ始めている。同社に限らず、最近では「メンバーシップ雇用からジョブ型雇用へ」の流れの中で、またはDXやダイバーシティー&インクルージョンなど、部門単独では解決しにくい複雑な経営課題に対し、プロジェクト型の組織を形成する企業が目に見えて増えてきている。

 しかし、いざプロジェクト型の組織を立ち上げてもなかなかうまく機能しない。組織横断、職種横断、職位横断のチームで仕事をしたことのない人たちであればなおのこと、たちまち思考停止、行動停止に陥りがちだ。

 「当社(の事業部門の多く)は短期決戦で売り上げ目標や予算の帳尻を合わせる『押し込み型』の仕事のやり方に慣れきっていまして」

 前述の人事部門のマネジャーはこう語る。今までのやり方で、部門やチームの中の人たちだけで、なおかつ個人の努力と気合・根性で「何とかしてきた」組織の人たちは、悪気なくプロジェクト型の仕事の経験値がない。テーマ設定やゴール設定をし、経営陣またはそのテーマのオーナーからの期待を明確にし、職位や立場や専門性の異なる人を束ね、自分たちなりに問いを立て、タスク分解し、自分たちなりの答えを出していく。そのやり方に慣れていない。

今がチャンス!情シス組織の「ウリ」「強み」地図
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