入社して数カ月もたつと、仕事が「できる」技術者と「それほどでもない」技術者に分かれ始めます。できる技術者は、上司からの依頼を素早く理解し、手際よく資料にまとめ、定時に帰宅。周りからは「できるやつは要領がいいね」など言われています。
それほどでもない技術者は、時間をかけて資料をまとめ、定時ぎりぎりにメールで送信したら、電話がかかってきて何が言いたいのか分からないと怒られ、徹夜で修正して再提出。周りからの冷たい視線が気になります。
「できる」と「それほどでもない」の差はどこにあるのでしょうか。その1つは、ロジカルシンキング(論理思考)が身についているかどうかの違いにあります。技術者なら、ロジカルシンキングについては、基本を原理から知っておくべきです。ここでは、ロジカルシンキングを技術者に身につけやすく整理した「MALT(Modeling Approach Logical Thinking)」をベースに、日々の仕事ですぐに生かせる基本テクニックを解説します。
報告に「So What?」がない
上司などの関係者に報告や提案をするとき、多くの技術者に共通の弱点があります。それはロジカルシンキングの用語で、「So what ?がない」と言われるものです。具体例として「それほどでもない」若手の技術者の事例を使って説明していきます。
この例では、複数の事業部門からなる企業向けに全部門横断で使われる業務システムを作っています。その中でこの技術者は、複数のサブシステム共通の機能の設計を担当しています。ある週の週次報告で次のように報告しました。
私が担当している共通機能の設計ですが、想定外の作業が発生したために、遅延が生じている状況です。
読者の皆さんはどう思いますか。次のように感じるかもしれません。「想定外の作業とは何かが分からない」「遅延が生じているというが、どのくらいの時間かが分からない」。いずれも適切な感覚です。
では次のように修正したらどうでしょうか。
私が担当している共通機能の設計ですが、仕様の追加確認の作業に時間がかかったことが原因で、2日の遅延が生じています。
指摘には対応していますが、これではまだ足りません。So what ?がないのです。
So what ?とは、日本語で「だから何?」という意味です。修正後の報告は、事実は明確になっているのですが、結局それでどうすべきと考えているのか、どういう結果を予想しているのか、といった主張や結論が分からないのです。