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 上司やプロジェクトマネジャー(PM)などへの報告において、相手に報告内容を納得してもらうには、何が大事でしょうか。その1つは、報告した内容がモレなくダブりなく検討されたものであると思ってもらうことです。

 では、その納得感を得るにはどうすればよいでしょうか。ロジカルシンキングで定番の考え方、「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」を使うと、すべてが検討されている、という納得感を生み出すことができます。

 SEがPM向けに、担当する作業の進捗後れを報告する場面を例に考えてみましょう。次のように報告したとします。

私が担当している共通機能の設計ですが、仕様の追加確認の作業に時間がかかったことが原因で、2日の遅延が生じています。このままではプロジェクト全体に遅延が波及する恐れがあります。2日の遅れを、週末の休日出勤で回復します。

 この報告において、「2日の遅れを週末の休日出勤で回復する」という対策を提案しています。これに対して、「ほかの可能性も十分に検討したのか?」と聞かれたらどう答えればよいでしょうか。

 「はい。自分なりに十分考えました」は、もちろんNGです。では、次のように答えたらどうでしょうか。

はい。スケジュールを延ばせないかどうか聞いてみましたが、そうすると、全体が大幅に遅れると言われました。ほかに、手伝ってくれる人を増やすことも考えましたが、今から入ってもらっても指示の手間が増えるので効果はなさそうです。また、作業範囲を変更できないかも検討したのですが、その見直しに必要な調整は間に合わないと考えました。

 これですべてを検討したと納得できるでしょうか。

 ここで、上記の回答を、MECEの考え方を使って分類してみます。MECE=Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveは、要素となる項目をモレなくダブりなく分類することを意味します。

 上記の例で出ているのは、要員追加、スケジュール延期、作業範囲変更、休日出勤という4種類の対策案です。これがモレもダブりもないとどうすれば言えるでしょうか。1つのテクニックは、概念の定義を使うものです。作業計画は、誰が(要員)、いつ(期間)、何を(作業範囲)するかで定義できます。この定義から、作業計画の変更による遅延対策を、要員、期間、作業範囲の3つに分類したものは、モレもダブりもない、つまりMECEといえます。

 しかし、まだ、休日出勤が残っています。これはさらにもう一つMECEを考えることで解決します。休日出勤は、作業計画のどの要素も修正することのない、つまり作業計画の変更が不要な対策です。つまり、作業計画を変更する対策とそうでない対策に分けることができます。この分類は、ある・なしの2択になるので、モレもダブりもない、MECEといえます。