筆者は長年、ITエンジニアの方々とプロジェクト活動をしたり、研修を通じて指導したりしてきました。その経験上、エンジニアの多くが文章をはじめとしたコミュニケーションスキルに苦手意識を持っているのを感じています。しかし、文章を書くスキルはエンジニアにとって重要なスキルです。専門化や高度化が進めば進むほど、専門外の人に伝える力は武器になります。
読み手に通じる文章を書くためには、いきなり文章を書き始めてはいけません。まず必要なのは、どんな文章を書くのかを設計するに当たり、文章を読む相手の状態をゴールとして設定することです。ゴールとは、文章を読んだ相手の人にどういう行動を取ってもらいたいのかです。
学生時代の読書感想文などとは異なり、ビジネス文書は必ず相手に何らかの行動をしてもらうことが前提になります。以下の3つのことを意識することで、文章に盛り込むべき必要な情報や書き方などが定まってきます。
(1)どんな行動を取ってもらいたいのか
提案書であれば、「何日までに予算承認を完了してもらう」「プロジェクト体制を整えてもらう」、マニュアルであれば「この文書だけを見て独力で操作できるようになる」など、具体的に相手に取ってもらいたい行動を考えてみましょう。具体的に考えることが、結果的に文書の本質を際立たせることになります。
相手の行動のイメージを作り、文書作成の最後まで忘れないようにしましょう。何となく「理解してもらえればいい」という文章はビジネスではあまり存在しません。
(2)そのために何を理解してもらいたいのか
次に、「その行動を取ってもらうために、何を理解してもらいたいのか」を明らかにします。例えば、「導入しようとしているアプリケーションの概要や最新テクノロジートレンド」や、「成功事例における新規性」など、行動につなげるために理解してもらわなければならないことを明確にします。
まれに、「どんな行動を取ってもらいたいのか」が不明確なまま、ひたすら事実、分析結果、見解などが綿々と続く文書があります。しかし、、行動に結びつかなければ単なるデータでしかありません。
(1)の最終的に取ってもらいたい行動が不明確な場合には、何を文書に載せるべきかという判断基準も曖昧になるため、あれもこれもとデータを載せてしまいがちです。したがって、まず取ってもらいたい行動を明らかにして、そのために何を理解してもらわなければならないのかといったひも付け作業を行います。