ITエンジニアが文章を書くときに最も気を付けたいことは、言葉にこだわることです。話し言葉ではあまり意識せずに言葉を使うことが多いですが、それを文字にして文章を作る際には、徹底して言葉にこだわりましょう。こだわるポイントは2つです。「曖昧な言葉を明確な言葉に置き換える」ことと、「不要な言葉を削除する」ことです。
文章の論理的な飛躍はなさそうなのに、何が言いたいのかが伝わらない文章をよく見かけます。その多くは、曖昧な言葉である「ビッグワード」を多用しています。ビッグワードとは、捉え方次第でどうとでも解釈できてしまう言葉です。ビッグワードは一見それっぽくかっこいい表現にも見えるため、多用しがちなITエンジニアは結構います。しかしビッグワードを使うことで、書き手の自分がそれ以上深く考えなくなってしまったり、読み手に自分の意図と違う捉え方をされたりするリスクがあります。
ビッグワードを使った表現を挙げてみましょう。例えば、「問題が山積みになっています」といったものがあります。このフレーズは、「問題」と「山積み」のどちらもビッグワードで、読む人によっていろいろな解釈をしてしまいます。まず、「問題」はどの問題を指しているか分からないし、「山積み」もどれくらいの量なのかが分かりません。
この場合に正しい文章の書き方は、「滞留在庫が1週間分を超えています」となります。「問題=滞留在庫が増えている」「山積み=1週間分のロスが生まれている」のように、誰もが誤解をしない言葉に変換する必要があります。
形容詞や副詞を使わない
筆者が若手のITエンジニアへの指導でよく言うのは、「形容詞・副詞を使わずに文章を書いてください」ということです。例えば「最適な」という言葉は聞こえがいいので、つい使ってしまいがちです。しかしよくよく考えたら、どんな状態が「最適」なのかを定義しなければ、この表現は何も言っていないのと同じです。この場合、「最適な物流システム」であれば「注文当日に商品が出庫され、納期を厳守できる物流システム」と書き下すことで曖昧さがなくなります。
つまり、曖昧な言葉を数字に置き換えたり、具体的な状況に変換したりして、ビッグワードを細かく砕いていきます。まずは形容詞や副詞を一切使わずに文章を書いてみましょう。実は自分があまり深く考えていなかったことに気付くかもしれません。
形容詞・副詞以外では「次世代的な」「グローバル化」などよく使われている言葉もビッグワードの候補です。自分でも理解しないまま何となく使うと、一見それっぽい言葉が並んでいるにもかかわらず中身のない薄っぺらな印象の文章になってしまいます。これらは使ってはいけないということではなく、自分の文章で述べる次世代的というのはこういう状態をさす、ということを明確にしてから使うようにしましょう。