ITエンジニアが文章を書くときに、最も苦戦するのが相手の知識レベルに対応していくことではないでしょうか。ITは高い専門性が必要とされる分野です。同じ知識レベルの人とそうでない人に対してでは、分かりやすい文章は異なります。
相手に合わせた文章の書き分けをマスターすることは、ITエンジニアにとって重要なスキルです。このスキルは、文章を書くときにとどまらず、コミュニケーション全般においても役立つでしょう。
相手の知識レベルに合わせた文章を書くための基本姿勢として覚えておくべきことは、具体的に表現することです。ただし、ここで注意してほしいのは、「数値やスペック情報は誰に対しても具体的である」という思い込みです。
例えば、ITの様々な技術的スペックである数値は、エンジニアにとっては具体的だと感じられます。しかし専門外の人にとっては、数字を見てもリアリティが持てないことが多いのです。
具体的とは、「相手にとってリアリティを感じられること」だいう認識が大事です。「ハードディスク容量10TB」という数値は、「在庫データ3カ月分相当」など、相手がリアリティを持ちやすい数値に変換するとよいでしょう。
そうは言っても、相手が知らない技術用語を使わないと文章が書けないこともあります。とはいえ、IT用語や業界・業務などの専門用語をあたかも誰でも知っているかのように書いている文章は、相手の読む気を阻害してしまうことになります。
相手が知らない専門用語を使う場には、「概要を示す」→「かみ砕く」→「定着化」という3ステップで説明して、知識として定着化させてから使い始めましょう。
ステップ1:概要を示す
まず、ひと言で「○○とはどういうことか?」を言い切ります。このときに有効なのは、(1)比喩を用いたり、(2)既に相手が知っているものとの関連性で表現したりすることです。例えば次のように説明します。
今回のシステムでキーになるのは、○○というテクノロジーです。
(1)これはひと言で言うと「XXXのようなもの」です。
(2)これは、以前はやった「XXX」というテクノロジーが進化したものです。
ステップ2:かみ砕く
次に、概要を示したことを、平易な言葉や具体例を使ってかみ砕いて説明します。例えば以下のように説明します。
仮にあなたが今、△△というキーワードで検索をするとします。今までは、〇〇となることが多かったと思いますが、このテクノロジーでは◇◇という結果が返ってきます。それは□□という仕組みがあるためです。
ステップ3:定着化
最後に、具体例などを出して専門用語を定着化させます。これ以降は普通の用語として使っていきます。