理化学研究所が発表した多能性幹細胞「STAP細胞」の不正疑惑で日本の研究開発力への信頼が揺らいだ2014年。民間企業でも、消費者からの信頼を大きく損なう事件が起きた。
教育サービスを提供するベネッセホールディングスは2014年7月9日、子会社であるベネッセコーポレーション(ベネッセ)のデータベース(DB)の顧客情報が持ち出され、最大約2070万件の情報が漏洩した可能性があると発表した。6月に就任したばかりの原田泳幸会長兼社長(当時)は記者会見で「多大な迷惑を掛けたことを深くおわび申し上げる。信頼回復の第一歩として、情報の拡散防止に全力を尽くす」と謝罪した。
外部委託社員にアクセス権
ベネッセは小中学・高校生向け通信教育講座「進研ゼミ」などを手掛ける。事件はサービスの利用者宅に他の教育サービス会社からダイレクトメール(DM)が届くようになり、ベネッセに「個人情報が漏洩しているのではないか」と問い合わせが相次いだことで発覚した。
問題を受けてベネッセは社内調査を始めた。7月7日には自社から漏洩した情報が他社のDMなどに使われていることを確認。7月9日に記者会見を開いて事実を公表した。ベネッセは警察に刑事告訴し、それを受けて捜査に乗り出した警視庁は7月17日、ベネッセの情報処理子会社であるシンフォームに所属していたシステムエンジニア(SE)を逮捕した。
SEは顧客情報を扱うシステムの開発を担当し、顧客DBへのアクセス権限を持っていた。SEの供述によると、パソコンから情報の持ち出しを防止するソフトウエアの機能に不備があることに気付き、2013年7月頃から複数回にわたって顧客の情報を社外に持ち出す犯罪に手を染めていた。持ち出した情報は名簿業者に数百万円で売却していた。