2011年(平成23年)、みずほ銀行は東日本大震災をきっかけに大規模なシステム障害を引き起こし、当時の頭取が引責辞任する事態に追い込まれた。震災はみずほだけでなく、あらゆる企業のシステム基盤を揺さぶった。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。死者と行方不明者が1万8000人超という多大な被害をもたらしただけでなく、あらゆる業界を根底から揺さぶった。例えば電力業界では東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、原発離れと再生可能エネルギーへのシフトという新たな流れを世界規模で生み出した。
金融業界も例外ではない。震災の3日後の3月14日にみずほ銀行で起こったシステム障害はその象徴だ。みずほ銀行が大規模なシステム障害を引き起こしたのは2002年に続いて2回目となる。現金の需要が普段以上に増した非常事態の真っ最中。最悪ともいえるタイミングで老朽化した情報システムを使い続けたリスクが表面化した。
きっかけは思わぬ出来事だった。東日本大震災を受けて、テレビ局が義援金への協力を呼び掛けた。これにより、みずほ銀行東京中央支店の義援金口座に振り込みが殺到。勘定系システムの取引明細の件数が1日に格納できる上限値を超えてしまった。
義援金口座の設定を誤る
ここに人為的なミスが重なった。みずほ銀行が義援金口座の設定を誤っていたのだ。口座を設定する際には取引明細を通帳に記帳する「通帳口(ぐち)」か、記載しない「リーフ口」のどちらかを選ぶ。今回のケースはリーフ口に設定すべきだった。義援金口座は大量の振り込みが見込まれていたからだ。
ところがみずほ銀行は義援金口座を通帳口として設定していた。当初はリーフ口としていたが、2007年12月にテレビ局から「振り込み明細を通帳で把握したい」との要請を受け、設定を変えていた。
義援金の受け付けを始めた当初、顧客サービスは通常通り動作していた。この時点で当該口座以外の処理にはほとんど影響がなかった。