1991年(平成3年)、いまも現役の技術である「WWW(World Wide Web)」と無償OSの「Linux」が誕生した。インターネットの本格的な普及に向けた中核技術として広がった。先進的な技術や製品を共同開発するオープンイノベーションの先駆けにもなった。
政府の景気判断が52カ月ぶりに後退局面に変わり、昭和から平成にまたいだバブル景気が終わりを告げた1991年。コンピューター業界のトレンドを変える2つの技術が生まれた。
インターネット上で情報を共有するための「WWW(World Wide Web)」と、無償OSの「Linux」である。生まれた背景は無関係だったが、「有志の技術者が多数参加して開発や標準化を進める」「技術仕様やソースコードを無償で公開・共有する」ことで発展し、普及してきた点は共通する。
今で言うオープンソース型の開発で成功した先駆的事例にもなり、後に大手ITベンダーも同じ手法を取り入れるなど、現在のIT業界の発展にもつながっている。いわゆるオープンイノベーションの先駆けとも位置付けられる。
W3Cが発足、企業にも浸透
WWWはスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)で生まれた。素粒子物理学の研究機関である同機構にソフトウエア技術のコンサルタントとして勤務していたティム・バーナーズ=リー氏が、複数の文書を相互に関連付けるハイパーテキスト技術を使った情報共有プロジェクトを1990年に提案したのが始まりだ。
当時、多数の文書を相互参照して関連付けるハイパーテキストの技術は既に存在した。バーナーズ=リー氏は文書の所有者が1人でなく多人数である前提で、参照方法を工夫したHTML(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)を開発。HTMLに基づいて記述した文書ファイルを送受信する通信プロトコルHTTP(ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル)や、文書の所在を示すURL(ユニフォーム・リソース・ロケータ)などの関連技術も開発した。これらに基づく情報共有システムのWWWや文書を管理するサーバー用ソフトWWWサーバー、文書閲覧ソフトのWebブラウザーなどを開発し、1991年8月に最初のWWWサーバーを公開。インターネットのニュースグループなどに掲示した。