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 グルメサイト「Retty」を運営するRettyは、人工知能(AI)の1つである機械学習を活用したシステムの開発に力を入れる。2017年12月には「おいしそうな写真」という感性的なデータを自動抽出するシステムを開発した。同社サイトで店舗に関する情報を閲覧したユーザーに、掲載店への訪問を促す狙いだ。樽石将人CTOは「AIに関する知見を蓄積し、収益につながるシステムを開発できるようになった」と話す。

 今でこそAIを随所に活用する同社も、「初めは機械学習、特にディープラーニング(深層学習)がどんな用途に効果的なのか、分かっていなかった」(樽石CTO)。AIが効果を発揮するそもそものテーマ設定に悩んでいたわけだ。

 効果を発揮するテーマを設定するには、深層学習への理解を深める必要がある。そのためにはITエンジニアが気兼ねなく試行錯誤できる環境が必要だと樽石CTOは考えた。そこで学習環境の整備に工夫を凝らした。

 具体的には、ハードウエアから自前で選択して基盤を構築した。グルメサイト本体はサービス基盤にパブリッククラウドを採用しており、AIの学習環境を整備する際もパブリッククラウドは候補に上がったものの、見送った。

 深層学習にはGPU(Graphics Processing Unit)を搭載するマシンを使うことが多い。ところが、クラウドが提供するGPUの仮想マシンの利用料金には割高感があったという。料金が割高では社内のITエンジニアが気軽に試行錯誤しにくい。

GPUマシンとコンテナを組み合わせる

 そこで米エヌビディア(NVIDIA)のGPUを搭載するマシンを調達し、クラスター構成にしたうえでコンテナを稼働。用途に応じて柔軟にGPUなどの資源を拡張しやすい基盤を構築した。機械学習フレームワークには、グーグルの「TensorFlow」やPreferred Networksの「Chainer」を採用した。基盤の構築コストは50万円ほどという。

気軽に深層学習を試すためにRettyは自前の基盤を整備
気軽に深層学習を試すためにRettyは自前の基盤を整備
(写真の出所:Retty)
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 AIの基盤を安価に作り上げ、ITエンジニアが試行錯誤しやすい環境が整った。これにより、着実にAIへの理解を深めていき、システム開発につなげていった。手始めに、グルメサイトのユーザーが投稿した写真データに画像認識のAIを適用し、料理、店舗外観、内観(店内)、メニューの4種類に自動的に分類するシステムを作った。外注していた作業を自動化し、コスト削減につなげた。これにより基盤構築のコストはすぐに元が取れた。

 その後もほぼ毎月1件のペースで業務改善に役立つAIシステムを開発していった。様々な開発を通じてさらに知見を蓄えたことにより、2017年12月のおいしそうな写真を抽出できるシステムの開発が可能になった。

 不良品の検出、需要予測、店舗での導線分析、顧客対応の代行――。様々なシーンで人工知能(AI)を導入する動きが盛んになってきた。特にRettyのように、機械学習の手法を採用したシステムの開発を模索する取り組みが目立つ。