2014年の米国事業開始以来、倍々ゲームで現地売り上げを伸ばしている日本の中小企業がある。京都府宇治市に本社を置くアルミ切削加工専業メーカー、HILLTOPだ。大手ITベンダーや米国航空宇宙局(NASA)などから、さばき切れないほどの注文が舞い込んでいるという。その成功の要因はどこにあるのか。本稿はHILLTOPの米国法人HILLTOP Technology Laboratory社社長の山本勇輝氏にその秘密を聞く第3弾。今回は米国市場の狙い方を中心に話が進んだ。(聞き手はリンカーズ専務取締役、Linkers International Corporation取締役社長の桑島浩彰氏) ★これまでの記事はこちら 第1回 第2回

左:HILLTOPの山本勇輝氏、右:リンカーズの桑島浩彰氏
左:HILLTOPの山本勇輝氏、右:リンカーズの桑島浩彰氏

山本社長は米国法人のHILLTOP Technology Laboratory社で社長をされていますが、そのきっかけは?

山本氏:20年前位に副社長がシリコンバレーを訪れた際に、いつかここで(ビジネスを)やりたいと思ったそうです。ただ、企業規模的にも自分の代ではなかなかそこまで行くことはできなかったので、5年前ぐらい前に私に声をかけていただきました。

 内部的な事情ですが、いわゆる事業承継という部分もあります。ある程度の人数・規模になってきた時に事業承継がスムーズにいかないケースが多いですよね。僕自身の実績も必要ですし、シリコンバレーに行って駄目であれば僕以外の者が担当することになるだろうし。そういった理由もあり、事業承継の一環でもありました。

 ただ、米国の経営に関して、出資はしていただいたのですが、別法人にはなっているので、経営に口を出されたことは一度もありません。

米国にどのように進出していったか教えてもらえますか。例えばカリフォルニア州アーバインに工場を借りた訳ですが、なぜアルミ加工のモデルが現地でも通用すると思ったのか。具体的な検討ポイントというか、何を第一歩として市場を見たのか、顧客をみたのか、ニーズをみたのか。

山本氏:弊社は、米国での海外取引経験は一切なく、顧客もゼロでした。ただ、もう日本を出ることと、工場を作ることは確定していましたので、こんなことを言うと怒られますが、副社長は最初に風呂敷を広げて、包むのが僕の役割でした。

 米国での立地ですが、試作品の製造は、開発の最先端でやりたいという気持ちがありましたので、まずはシリコンバレーが選択肢に入りました。

 さらに、流通網がしっかりしている所を考えました。我々の売りはスピードなので、1日で作っても運ぶのに1週間掛かるようでは意味がない。最先端の開発している所でそういう所はないと思うのですが、やはりスピードは重要です。

 また、我々のビジネスには、人件費が高い所が適しているとも考えました。もちろん開発の拠点で人件費が高いのは当たり前ですが、我々のシステムを使えば、米国に機械を置いて、日本でプログラミングすれば地産地消ができます。

 実は、米国国内でプロトタイプをやっている企業は非常に少ない。それは、人件費が高く1個あたりの単価が跳ね上がってしまうからです。日本でも1点モノだけで生計を立てている会社は非常に少ないですが、米国ではさらに少ない。人件費が圧迫してしまって末端価格が跳ね上がってしまうからです。更にプログラマーを沢山抱えなければならない状況で、プログラマー1人あたりの賃金は最低でも15万~20万米ドルになります。プロトタイプをやろうと思うと、うちみたいな小さな会社でも6~7人抱えなければなりません。弊社では、その一番ランニングコストの掛かる所を、日本にアウトソースしてプログラムデータを買っています。しかし末端価格の相場としては非常に高いので、価格的に大きな差分値が生まれています。

 米国の平均のリードタイムは平均2週間、長ければ6週間以上掛かるケースもあります。弊社の場合、これを5日でやるのでスピードとコスト、品質には自信があります。特にスピードと品質ではずば抜けています。スピードの面で、同じようなことができるのは、米国内ではProto Labs社という会社だけですね。