グリーンインフラの社会実装が先行して進む米国ニューヨーク市。同市では合流式下水道の課題解決などに、グリーンインフラによる越流水対策を導入している。ブルックリン・ゴワナス運河の先進例を交えて、水辺総研の滝澤恭平取締役が説明する。
水環境パートとしてグリーンインフラを位置付け
米国ニューヨーク市のグリーンインフラの最大の特徴は、合流式下水道の越流水(CSO : Combined Sewer Overflow)対策を通して、都市水域(water body)の水質改善を行うことにフォーカスしている点である。
雨水と汚水が同じ下水管を流下する合流式下水道では、一定以上の降雨の際には下水管の流下能力を超えた、雨水混じりの汚水が吐き口から河川に流出してしまう。その結果、都市水域の水質は悪化し、生態系やアメニティー、景観にダメージを与えるのが、ロンドン・東京などのような合流式下水道を採用する世界中の都市に共通の問題である。
ニューヨーク市の場合は、このような合流式下水道の課題に向かい合い、グリーンインフラによるCSO対策を行うことによって、水辺のアメニティーやレクリエーションの質向上、都市生態系の再生を行い、同市のウォーターフロントの魅力を水域から高め、再生することにターゲットを設定している。
この方針は、ブルームバーグ元市長の下で作成した「Vision 2020: New York City’s Comprehensive Waterfront Plan」という、ニューヨーク市の水辺の総合的なビジョン/都市戦略とも連動している。つまり、グローバル・シティーのダイナミックな水辺再生ビジョンに貢献する、水環境パートとしてグリーンインフラを位置付けている。