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陸域のグリーンインフラに対して、海域の「ブルーインフラ」という言葉はまだ露出がそれほど多くない。しかし、最近注目を集めている「ブルーカーボン生態系」のように、気候変動の緩和に寄与する海岸や浅海域は、グリーンインフラの重要な候補の1つだ。ブルーカーボンに詳しい海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の桑江朝比呂沿岸環境研究グループ長にポイントを語ってもらった。前後編で掲載する。

海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ長 桑江 朝比呂(くわえ・ともひろ)
海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 沿岸環境研究グループ長 桑江 朝比呂(くわえ・ともひろ)
1995年に京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、運輸省港湾技術研究所研究官に。2009年に独立行政法人港湾空港技術研究所のチームリーダーになり、16年から現職。10年から17年まで熊本大学沿岸域環境科学教育研究センター客員教授(兼任)を務める。専門は沿岸の生態学や物質循環、自然再生など。06年に土木学会論文奨励賞、11年に文部科学大臣表彰の若手科学者賞などを受賞(写真:日経コンストラクション)
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グレーとグリーンの調和を図る

 港湾法で定めている港湾施設は、コンクリートなどの様々な人工物(グレーインフラ)や「海浜」と定義されている砂泥などの自然資本(グリーンインフラ)から構成されている。「海浜」という場においては、これまで砂浜や干潟、藻場といった浅場の保全や再生が実施されてきた。港湾区域全体としては、グレーインフラとグリーンインフラとの調和を図る必要がある。

港湾法で定めている様々な港湾施設(資料:国土交通省)
港湾法で定めている様々な港湾施設(資料:国土交通省)
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 両インフラの調和を図るには、例えば、適切な水深に航路を維持するための浚渫(しゅんせつ)で発生した土砂を有効活用した浅場造成や、防波堤や護岸に、生物の生息に適した構造形式を取り入れるといったアプローチが考えられる。

 このような港湾施設の新設や維持管理には、これまで公共事業として税金が投入され続けてきた。しかしながら、今後20年を考えると、高度経済成長期に造ったグレーインフラが老朽化して更新の必要性が増す。一方で少子化や高齢化、経済成長の加速、そして納税に対する国民意識の変化など、今般の経済社会の情勢を勘案すると、グレーインフラの更新に見合う税収の増額が見込める余地はなさそうである。

 さらに、気候変動による影響や被害が今後拡大していくとの前提に立つならば、公共財政はますます厳しくなると予想される。

 それではどうすればよいのか? コスト削減はもちろんであるが、課題を解決できるほどの劇的な削減はおそらく期待できない。国策としては、インフラ更新までの期間を長くすることを重点課題に置いている。私はインフラ整備における便益を上乗せし、費用対効果(B/C)を改善することや、非公共(企業や家計)からの資金調達が今後重要になると考えている。