北朝鮮による核・ミサイル開発の脅威が、住宅地において新たな施設ニーズを生みつつある。核シェルターだ。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射する事態に備え、国内では全国瞬時警報システム(Jアラート)が整備され、携帯電話や防災無線などで市民に警告できるようにした。政府は、ミサイルが発射されたという情報を受けた場合に、近くの頑丈な建物内や地下に避難するよう勧めている。
とはいえ、戸建て住宅などを中心とした住宅地において、そのような場所は限られている。日本核シェルター協会の調査によると、スイスやイスラエルは全人口を収容できるシェルターを持つのに対し、日本には人口の0.02%分のシェルターしか存在しないのが実情だ。
こうした状況を踏まえて、核シェルターの需要が増すとにらむ住宅会社が現れ始めている。九州で注文住宅や宅地開発を手掛ける七呂(しちろ)建設(鹿児島市)は、その1つだ。同社は2017年11月に核シェルターの輸入販売に着手した。販売するのは、米国の大手シェルターメーカーであるアトラス・サバイバル・シェルター社(カリフォルニア州)の製品だ。
アトラス・サバイバル・シェルター社のシェルターは、米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)が整備した避難所に関する基準などを踏まえて設計されている。既に世界十数カ国に輸出されており、日本では七呂建設が初めて輸入した。発注から輸入、設置までには約半年を要する。
年間約200棟の住宅建設を受注する七呂建設によると、まだ受注にまでは至っていないものの、販売開始から1ヵ月で53件の問い合わせがあった。販売から5ヵ月近くが経過したが、購入希望者や取り扱いを検討する同業他社などから毎月50件前後の問い合わせがある。18年4月時点で、実際の導入に向けて10件ほど具体的な検討が進んでいるという。