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 「日本は海に囲まれているため、海からの侵入に弱い」。海上テロ対策に関する情報提供や研究などを手がけるIMOS(東京・港)の井川哲雄取締役はこう指摘する。

 島国である日本に対し、海外からテロリストが侵入する経路は空港からか沿岸からの2つしかない。空港は警備対象となる拠点が絞られている上、厳重なセキュリティ体制が整備されている。一方、沿岸のセキュリティ体制は空港ほど強固ではないケースが多い。加えて、侵入できる物理的な範囲は圧倒的に広い。ある意味、海はテロ対策における「死角」とも言える。

水中で音波を受信して解析するセンサーの例
水中で音波を受信して解析するセンサーの例
画像提供:NEC
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 海から想定されるテロ攻撃の種類は多様だ。船舶から監視網をかいくぐって侵入したテロリスト、および船舶そのものを使った沿岸施設への攻撃、原油などエネルギー資源を運ぶ輸送船や旅客船などを狙う攻撃、などがある。

 沿岸部に会場を設ける国際スポーツイベントや国際会議の場合、海からの攻撃を想定する必要性は高い。2020年の東京オリンピックでは水泳やカヌー、ボートといった競技の一部は海沿いに会場を設ける。東京オリンピック・パラリンピック大臣の鈴木俊一氏は「沿岸での海上警備が必要だ」とみる。

 世界最大級のスポーツの祭典であるオリンピックの開催は、最新技術を使った対策システムの活用について考えるきっかけになりそうだ。平常時に比べて格段にリスクが高まる海上テロに立ち向かうには、従来の海上警備の手法に加え、最新技術を使った対策が心強い味方になる可能性がある。