最近、筆者のところに企業の商品企画や技術部門からの相談が増えた。『商品のイノベーションを狙ってさまざまな手法を試してみたが、いつも結局「ワイガヤ」で終わる。なんとかしたい』のだそうだ。

聞けば、リーンスタートアップ、アジャイル、スクラム、ハッカソン、アイデアソン、デザイン・シンキング、オープンイノベーション、共創など、さまざまな流行りの手法に取り組んできたとのこと。しかし、それだけやっても奏功しないという。商品づくりの現場が抱える「イノベーション疲れ」は、深くて激しい。
そこで今回は、流行りの手法で本当にイノベーションを起こせるのかを考えてみた。
イノベーションは、普遍的な常識破りの発想が起こす
「イノベーション」にはスタンダードな定義がないので、ここではイノベーションを「常識破りの変革」と考える。そして、「常識破りの変革」を起こすのは、「常識破りの発想」である。つまり、イノベーションを起こすのは、「常識破りの発想」であることになる。
とは言え、「常識破りの発想」が常にイノベーションを起こすわけではない。例えば、奇をてらったものや限定的なものはダメである。長期的視点では、イノベーションが社会にもたらすものは、実のところ「新たな常識」であるからだ。
これは、イノベーションを起こす常識破りの発想が、何かしら「普遍的」なものでなければならないことを意味する。つまり、イノベーションを起こすのは、「普遍的」な「常識破りの発想」なのだ。
新発見と新発明は、普遍的な常識破りの発想を生む
そのことを確かめてみよう。
よく知られるように、新たな自然法則(新発見)と、新たな科学技術(新発明)は、しばしばイノベーションを起こす。しかし、新たな自然法則・科学技術そのものがイノベーションを起こすわけではない。実際には、「この法則や技術は、こういう風に役立つのではないか」といった、それらをベースとする「発想」がイノベーションを起こす。
自然法則・科学技術は「普遍的なもの」であるから、それらをベースとする発想も「普遍的なもの」となる。一方で、新たな自然法則や科学技術は、まだ世の中に知られていないものだから、それらをベースとする発想は、既に世の中に知られているものをベースとする発想である常識とは全く異なる「常識破りの発想」となる。
つまり、新たな自然法則と科学技術は、「普遍的」な「常識破りの発想」を生む。だからこそ、新発見と新発明はイノベーションを起こす。