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 「異能」ともいえる際立った能力や実績を持ち、まわりから一目置かれるエンジニアを1カ月に一人ずつ取り上げ、インタビューを掲載する。今月取り上げるのは、ベンチャー企業の立ち上げやヤフーでのモバイル開発などを手掛け、ソフトウエア開発業界に広い人脈を持つ荻野淳也氏。現在は珈琲専門 猫廼舎(ねこのや)という喫茶店の店主でもある。今回は、猫廼舎の開店に至った経緯や現在の仕事を聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経 xTECH/日経NETWORK


前回から続く)

 今の自宅は、もともと仕事場として2012年8月に四谷三丁目に借りたものです。当時、新宿の旅行ECサイトの会社に週4日くらい常駐しており、自分の事務所も近いほうがいいと思ったのです。電車通勤が苦手で、特に満員電車に乗るのが嫌なので。

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 新宿の旅行ECサイトの仕事は、足掛け4年くらいしていました。最初の頃は、社外の人間なのにチームを任されていました。週4日から始めて週2日になり週1日になり、最後はアドバイザーのような立場になりました。

 旅行は究極のECだと言われています。システム構築の難度がとても高いからです。例えばホテルの検索エンジンを作る場合、何歳の子供から1人分の料金を取るかといった細かい条件を考慮しなければなりません。製品のバリエーションが多様で、検索の条件もシビアです。在庫もそんなに潤沢ではありません。

 航空機の座席の在庫を問い合わせる際には、その都度数十円程度の料金が発生します。このため、キャッシュして問い合わせ回数を減らすといった工夫が必要になります。いわば、すごく遅いデータベースを使っているような感じです。

 キャッシュすると不整合が起こるので、それを解消して正しい在庫状況を反映するために様々な手段を使います。在庫の減り方を自分で予測しながら、このあたりでもう1回問い合わせようといった具合です。今なら人工知能的なアプローチがかなり有効かもしれません。

 ツアーを売る場合だと、航空券、ホテル、オプションのパッケージをすべて考慮しなければなりません。航空券に検索の条件があり、ホテルにも禁煙/喫煙、広さ、温泉が付いているかどうか、子供は何歳から1人とカウントするかといった多くの条件があります。