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 ソーシャルゲームは、データ分析はできるものの最終的なアクションが取りづらいという特性があります。例えば、ユーザー間の公平性が大切なので、A/Bテスト(異なる施策をしたグループを比較するテスト)をユーザーでやるのは困難です。

 ソーシャルゲームでは、AIを使うよりもデータを見て決めた施策を実施するほうが有効なことが多いと感じています。ベースのKPIをモニタリングするほうが業績改善には効きます。ドリコムでは、AIで何かするというよりは、基礎的な改善を行っていました。難しい分析をしなくても、簡単な分析で効果が出るならそれに越したことはありません。

 ちなみに現在のVeinにはAIは入っていません。まだその時期ではないと思いますし、AIがプロダクトの価値でもないと思うからです。コンサルティングをしている企業にも言っていることですが、ベースの売上高が大きくなければAIの導入には意味がありません。

 AIを使ったからといって、売り上げが劇的に増えるわけではありません。仮に0.1%増えるとすると、売り上げが1000億だったら、1億円の売り上げ増加になります。ところが売り上げが1億円しかない状態で0.1%上がっても10万円にしかなりません。機械学習はサービス規模が小さいときにやっても意味がないのです。AIのシステムを作るコストに対してリターンが見合いません。

 他の人にくらべて自分がアドバンテージがあると感じているのは、すべての規模の企業を経験していることです。10万人の社員を抱えるNTTのような巨大企業、ドリコムのような300人規模の企業、10人規模のベンチャー企業、社員1人社長1人の完全スタートアップまで経験してきました。それぞれの段階で何が問題になるのかが分かります。

 例えば、その企業が「今、AIをやるべきかどうか」は一瞬で分かります。「AIを導入したい」という相談を受けても、実は導入する必要はないことはよくあります。社内政治の話がこじれて、AIを導入する話になっているのです。そうしたことを判断できるという点で重宝してもらっています。

 僕は、機械学習のスキルで問題を解決するというよりは、AIのための問題設定、効果検証の方法の検討、どう価値を出すかという検討、オペレーションに乗るかどうかの検証などをしています。平たく言うと「どこで使ったらいいのか、機械学習で解きやすい問題はどこか」を見極める仕事です。

 難しい問題にいきなり難しいアプローチで突撃してもうまくいきません。相手の会社の技術レベルを見て、「この会社だったらこういうやり方でできる」「ここの部分は他社で使われているこの技術を使うだけでいい」といったアドバイスをしています。

 自分は技術そのものを追求しているというよりは、ビジネスや企画のために技術を利用している側面が強いと思っています。また、新規事業をゼロから立ち上げてイチにするために技術を利用しているという側面も強い。新規事業を立ち上げるタイミングでは1人で企画も技術も両方できないと難しいからです。

 僕のスキルセットはゼロイチに極端に振っています。プロダクトを最初に作るところに特化しており、安定稼働させるスキルは持っていません。技術面では、ゼロをイチにする力と安定運用したときのデータ分析が僕の強みだと思っています。