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 食とテクノロジーの融合がテーマとなった2018年の「Smart Kitchen Summit Japan」(SKSJ2018、2018年8月8~9日開催)。最も印象に残ったのが、登壇者や参加者の多彩さだ。多様な業界から異なるバックグラウンドの人々が集まった。異業種から独立・転職して食とテクノロジーの分野に足を踏み入れた人も多かった。例えば、調味料サーバーを開発したクックパッド研究開発部スマートキッチングループグループ長の金子晃久さんは、元はソニーの技術者だった。

 食とテクノロジーの融合は、食文化とテクノロジーのあり方を変えるとともに、人々の生活体験や働き方も変化させる。今回は、金子さんの転職の経緯を織り交ぜながら、新しい未来を切り拓く食とテクノロジーの融合の流れと、食とテクノロジーが持つ力をみていく。

食とテクノロジーの融合が目指すこと

 近年、食・料理に関しては、食糧危機やフードロス(本来は食べられるはずの食品が食べ残しや期限切れなどで捨てられること)、食の安全性に対する不安、調理に要する手間の大きさなど、多くの未解決の課題が存在する。しかし、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)、ビッグデータ、3Dプリンター、ドローン、画像認識などのテクノロジーの進化が加速し、米国シリコンバレーをはじめとする世界中で食とテクノロジーの融合が注目されるようになってきた。そして、IT(情報技術)やエレクトロニクスといった異業種の出身者が、創業者やキーパーソンとなるスタートアップ企業が続々と誕生してきている。

 食や料理の世界にテクノロジーの波が押し寄せる中、目線や立場が異なる人々が業界横断的に集まり、アイデアや発想を組み合わせる。それにより、新しいキッチンやレストラン、生活体験が誕生もしくは誕生しようとしている。

 この流れは、一歩先んじる米国だけでなく、日本でも始まっている。SKSJ2018では、レシピ、食品、家電、流通・小売、住宅、キッチン設備といった分野の企業だけではなく、行政、大学、研究機関、料理人、フードジャーナリストなど異なる専門性を持った人たちが集まって、食と料理の現状と未来を熱く語った。

 SKSJ2018の発表と展示から、食とテクノロジーの融合は、単純な効率化の追求でなく、より豊かな社会や本質的な人の幸せを追求するもので、そこから人々の暮らしに役に立つテクノロジーと豊かさを感じられる食文化の誕生が期待できると感じられた(「『日本型のスマートキッチン』が見えてきた」参照)。さらに、企業の新たな成長と人々の新しいライフスタイルの創出が、食とテクノロジーの融合には期待される。

 数ある発表の中で、筆者が最も共感したのは、前述の金子さんのプレゼンだ。次は、金子さんの挑戦について紹介する。