IoT(モノのインターネット)技術の革新が、住宅業界に関連したビジネス市場を大きく変えようとしている。Amazon Echo(米アマゾン・ドット・コム、Amazon.com)やGoogle Home(米グーグル、Google)といったAIスピーカーの登場で、その熱は一気に高まった。住宅のIoT化、いわゆる“IoT住宅”を旗印に、業界の垣根を越えた市場争奪戦が始まろうとしている。
ミサワホームは住宅会社として、このIoT革新にいち早く取り組んだ企業の1つだ。AIスピーカーが日本に上陸するよりも前にIoT住宅のプラットホーム「LinkGates(リンクゲイツ)」を開発。2017年4月には、同社が建築する住宅に実装できる製品として販売を開始した。
30年前にまいた種が成長
ミサワホームが早い段階でIoT住宅を手掛けられたのには理由がある。それは、30年ほど前から脈々と受け継がれてきた、住宅の革新に関する研究があったからだ。
1990年ごろ、日本の住宅業界ではホームオートメーション(HA)が注目を集めていた。家電や設備機器を情報ネットワークで接続して制御することで、さまざまなサービスを居住者に提供するという考え方だ。ミサワホームのシンクタンクであるミサワホーム総合研究所は、HAをベースに住宅内で活躍するロボットの開発に取り組んだ。
例えば、グルメロボットの「ハイテクキッチン」は、料理を支援する機能を搭載した〔写真1〕。さまざまな料理のレシピをデータベース化しておき、そのデータを基にキッチンが料理のカロリーを計算したり調理方法を示したりする。「カウチシアターロボ」は部屋中を移動できるソファーだ〔写真2〕。室内を移動するだけでなく、座ったままの状態で、照明や空調、テレビなどを操作できる。ほかにも、シャワーや洗面、トイレを1つの空間にまとめた「ハイテクバスロボット」を開発〔写真3〕。これらのロボット開発を通じて、住まいの快適さや居心地の良さに関わる機能を研究した。
その後、09年ごろに注目を集めたスマートハウスをきっかけに、住宅のIT化の研究を加速。エネルギーを管理・制御するためのHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を独自に開発し、「enecoco(エネココ)」という仕組みをつくるなど、住宅の革新に力を注いできた。
そして、昨今のスマートホームの議論を受け、社内横断型のプロジェクト「ホームOSプロジェクト」を立ち上げて、住まいのIoT統合システムのリンクゲイツを開発、発表したのだ。