ネット通販の拡大で、宅配便の数は増える一方である。だがそれに伴い、配達時に住人が家にいない「不在率」の高さが社会問題にもなっている。物流業者は再配達のため、二度三度と同じ家を訪問しなければならない効率の悪さに、長年悩まされてきた。
この問題の解決策として、にわかに注目を集めているのが宅配ボックスの設置である。玄関先などに宅配ボックスを置けば、住人が留守でも物流業者は荷物を宅配ボックスに入れておけるので再配達の手間が省ける。住人も帰宅すると荷物が届いているので、再配達を依頼する必要がない。お互いにとってメリットが大きい。
宅配ボックスは以前からあるが、最近は様々な企業が新商品を投入するなど選択肢が増えた。そして、IoT(インターネット・オブ・シングズ)対応の宅配ボックスまで登場。実証実験が始まっている。
今後は多種多様なIoT家電が家庭内に入り込んでいくだろう。しかし現時点では、大きなメリットを生み出す予感がするものは少ない。そうしたなか、「IoT宅配ボックス」は数万円の価格がもう少し手ごろになれば、一気に普及する可能性を秘めている。
IoT家電よりIoT宅配ボックスに期待大
実験に熱心なのはNTTドコモ。通信が必要になる「IoT宅配ボックス」には欠かせないキープレーヤーだからだ。従来はなかなか普及しなかった宅配ボックスにIoTを組み合わせることで急拡大する可能性が出てきた。
実験場所は、神奈川県藤沢市にある新しい街「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」。パナソニックの工場跡地に造られた街で、現在までに450戸の住宅に合計で約1500人が暮らしている。最終的には新築するマンションを含めて、1000戸に約3000人が住むことになる。
実験期間は2018年4月1日から同年6月30日までの3カ月間を予定。Fujisawa SSTの28世帯にIoT宅配ボックスが設置された。一見すると、従来から販売されているパナソニック製の住宅用宅配ボックス「COMBO(コンボ)」にしか見えない。それもそのはず。今回の実験の目玉であるIoT機器はコンボの中にある。
宅配ボックス内の下の部分に、コンボに合わせて用意した「箱(装置)」が置いてある。荷物をオレンジ色の部分に置くと装置の重量センサーが反応する。「荷物が置かれた」「荷物が取り出された」ことが、重量の変化で分かる仕掛けになっている。コンボにドコモのIoT機器を後から追加したわけだ。
一番奥にある黒い細長いものが通信アンテナ。ドコモは2018年秋から順次、商用化を予定しているセルラーIoTネットワーク「LTE-M」の実証環境を一足早く、Fujisawa SST内に整備した。