「これは電化製品ではない。保守や保証まで提供する新たな建材だ。中小工務店向けに提供する」。SOUSEI(奈良県香芝市)の乃村一政代表取締役は、同社が販売するIoT(モノのインターネット)住宅機器について、こう説明した〔写真1〕。
SOUSEIは住宅事業を手掛ける会社だ。家づくりの知見を生かし、IoT住宅への取り組みに乗り出した。同社が開発したIoT端末「v-ex(ベクス)」が可能にするのは、住宅内のテレビや照明器具の声による操作だけではない。電子クーポン券の発行や端末にカードをかざすだけの決済処理、遠隔診療サービスなども利用可能にする方針だ。全国の中小工務店と連携して、IoT住宅の普及を目指す。
販売目標は、2018年12月までに5000台。さらに19年には2万台を見込んでいる。18年7月末時点で、日本全国の700~1000カ所の提携工務店のモデルハウスに搭載する予定だ。
AIスピーカーが住宅業界を変える
これからの住宅市場は、生産年齢人口の減少とともに新築住宅の需要が減ることが確実視されている。そのような環境下で、住宅会社にとって重要なのは、「家づくりに専念し、引き渡し後も顧客を喜ばせながら収益を上げられる仕組みを構築することだ」と乃村代表は指摘する。
乃村代表は次のように続けた。「最近の顧客は、住宅を購入する“モノ”の消費から、住宅での暮らしを楽しむ“コト”の消費に重点を置いている。家づくりで顧客を喜ばすためには、住宅会社も“コト”のフェーズに移らなくてはならない」。その鍵となるのが、IoTの活用だ。
特に、AI(人工知能)スピーカーの登場が住宅でのIoT活用を加速させた。「これからは住人が住宅と会話する時代になる」と乃村代表。音声で機器を操作したり情報を提供したりする音声アシスト機能が、住宅・建築業界に大きな革命をもたらすという。
とはいえ、地域ビルダーや中小工務店が、IT(情報技術)やIoTの技術を勉強して習得するのは容易ではない。乃村代表の狙いは中小工務店がIoT活用に取り組むための仕組みづくりにある。賛同しパートナー企業となった中小工務店は既に200社を超えた。